突然ですが、私はコーヒーが大好きです。
ちょっと一息つきたい時、気分転換したい時、友人と語り合いたい時…カフェに行ってコーヒーを飲むのは、とても大切な時間。
でも、いつもちょっと罪悪感があります。
なぜなら、コーヒーの生産は労働問題や環境問題に繋がっていることが多いから。マイカップをなるべく使うようにしているけれど、忘れてしまうことも正直あります。
「このコーヒーって、人権や環境に配慮しているのかな…」「ああ、無駄にプラスチックゴミ出しちゃった…」コーヒーをめぐる問題を知ってからは、ふとした瞬間に罪悪感がちらつきます。
そんな私の元へ、「SDGsにとことんこだわったカフェがオープンした」という情報が入ってきました。ニューヨークが本店の「think coffee」が、東京・神田に上陸しました。
どんな感じなのでしょうか。オープン初日に行ってみました。
「think coffee」ってどんなカフェ?
「think coffee」は、元々弁護士をしていたJason Scherr(ジェイソン・シャー)さんが2006年に始めた「サステナビリティ追求型カフェ」。ニューヨーク大学の近くの小さなカフェから始まり、現在はマンハッタンで10店舗、ブルックリンで1店舗を展開しています。
「責任のあるビジネスがしたかった」と話すシャーさん。環境や人権を守るために、コーヒー豆からコーヒー農園で働く女性や子ども、カップの素材やインクに至るまで、とことんこだわっているといいます。
そんな「think coffee」に、ニューヨーク滞在中に足繁く通っていたのが、国連でSDGsの概念策定をリードしてきた田瀬和夫さん。「ダイバーシティ&インクルージョンが実現した空間で非常に居心地がよく、ニューヨークで一番好きなカフェでした」と話します。
田瀬さんは「日本でもSDGsに隅から隅までこだわったthink coffeeを出店したい」とシャーさんに声をかけ、1号店が東京・神田に誕生することになったそうです。
コーヒー豆は農家から直接、定額で取引
神田の「think coffee」に足を踏み入れると、落ち着いた内装にカラフルなアートがアクセントになった店内が目に入ります。
SDGsにこだわった、という触れ込みでしたが、店内にはSDGsの文字は見当たらず、一見普通のおしゃれなカフェに見えます。しかしよくみると、アートに「THINK ABOUT THE FARM WORKER(農園の人のことを考えて)」と書かれているなど、空間にメッセージが溶け込んでいます。
店長におすすめを聞くと、ニューヨークと日本向けにそれぞれ焙煎の方法を変えた「バッチブリューコーヒ」を紹介してもらいました。
ニューヨーク向けの方が酸味があって華やか、日本向けの方が酸味控えめでしっかりした味です。同じ豆でもこんなに味が変わるんですね!
このコーヒーは、農家さんと直接売買し、常に同じ価格で買い取っているのがポイントとのこと。シャーさんは、「最初はフェアトレード認証がついたコーヒーを扱っていましたが、どうしてもコーヒー農家に直接会いたかったんです」とこだわりを話します。
「コーヒー豆は、小さな農家たちが作った豆を地域の組合が集めて出荷できる状態に加工するんです。フェアトレードは組合とやりとりしているので、農家の人に直接コンタクトを取るのは難しかった。そこで私は、伝手をたどりながら農園と直接取引することにしたんです」(シャーさん)
think coffeeでは、価格が変動しやすいコーヒー豆を定額で購入し、その情報を開示しています。さらに農園で働く最も困難な立場にある女性や子どもまで賃金が行き届いているか、そのコミュニティのためにお金が使われているかまでこだわって、いくつかのプロジェクトも実施しているそうです。
カップにもこだわりが詰まっている
店内では基本的にマグカップ、グラスカップでの提供ですが、テイクアウト用の容器にもこだわりが満載。基本的に、全てコンポスト可能な素材を使用しているそうです。
例えば通常の紙のカップは水分に耐えられるように、内側には石油からできた素材を塗っていることも。そういった紙のカップは、自然に還ることが難しいといいます。
「そこで、PLAというとうもろこしからできた素材を内側に使っています。カラフルなデザインのインクも大豆からできているものなので、90日でコンポストできます」(シャーさん)
一見プラスチックに見えるカップも、実はとうもろこしからできたもの。こちらも90日で生分解性されるというから驚きです。
「東京店では、屋上にコンポストを設置し、できた肥料を近隣の農家へ提供したいと思っています。同じビルに入居しているコンポストの専門家とともに、具体的な導入日程や技術的な方法について議論を進めています」(田瀬さん)
今後はコーヒーの殻などから作った、リユースできるタンブラーも発売予定だといいます。
一方で、これからクリアしなければいけない課題も。
例えば上記の生分解性のカップたちはまだ日本での製造に至っておらず、海外から輸入しています。運搬の際にCO2が排出されてしまうため、少しでも早く国内で製造できるような体制を整えたい、と田瀬さんは話します。
「経済性とSDGsを両立させることは確かに難しいことです。しかし、どんなに難しいことでも、『きれいごとで勝つ』を実現したいと思っています。これからthink coffeeはどんどんアップデートをしていくので、ぜひ楽しみにしていてください」
◇◇◇◇◇
神田のthink coffeeが入っている建物は、築50年のビルをリノベーションしたもの。今秋にはビル全体の電力を再生可能エネルギーで賄うビル全体でZEB(ゼロ・エミッション・ビルディング)になる予定だそうです。
なんだかコーヒーを飲む「罪悪感」が少し減った気がして、ほっと安心してくつろげました。「think coffee」の名の通り、一杯のコーヒーから地球や人のことを考えたり会話するきっかけになる場所になりそうです。
私も今度は友人を連れて行って、「このコーヒー実はね…」と会話のタネにしたいと思います。