【こちらも読みたい】イチロー“社長”の言葉がネット上で話題に。「採用面接では何を質問する?」→気になる答えは?
ハフポスト日本版で反響の大きかった記事をご紹介しています。(初出:2023年1月20日)
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マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチローさんが1月18日、オリックスグループの公式インスタグラムで自身初のインスタライブを実施した。
「悩める大人の相談ライブ『イチ問一答』」と題して、事前に寄せられた質問に対し自らの考えを交えて回答した。
質問はキャリアや恋愛・結婚、人間関係まで多岐にわたったが、「道具」に関する質問ではイチローさんの深い思考が垣間見える瞬間があった。
“カメラ初心者”に「一番良いものを買って」とアドバイスした。
SNSを個人で使わないイチローさんが答える
現役引退後、初めてインスタライブに登場したイチローさん。そもそも、SNSを通じた発信を個人で行なっておらず、過去には「Twitterを使わない理由」をハフポスト日本版の単独インタビューで明かしていた。
それだけに、「悩める大人の相談ライブ『イチ問一答』」と題した今回のインスタライブは貴重な機会となった。
引退後は長らくプレーをしたメジャーリーグのシアトル・マリナーズで役職付きのインスタラクターを務め、チームの後輩選手にアドバイスを伝える一方、日本の学生野球にも積極的に関わり、高校生の指導も行っている。
イチローさんは“カメラ初心者”の質問に答えた。
「風景写真を撮りたくて一眼レフカメラを買おうと思う。初心者ですが、最初からいいカメラを買うべきか、それとも上達するまでは安いカメラで我慢すべきか」と問われ、アドバイスを求められたイチローさん。
質問に対し、「カメラのことはまったく分からないが、最終的には一番良いものを買ってほしいですね」と迷うことなく回答した。
「一番良いものを買って」。そう言った理由が深い
「最終的に」としたものの、イチローさんはなぜ「一番良いものを買って」とアドバイスしたのか。その意図を以下のように話した。
(これは)どの世界でも同じ。僕だったら野球ですけど。初心者でそれ(一番良い道具を扱うこと)は難しいことでしょう。技術的に。その時にあまりに機械(カメラ)と自分が求めるレベルが違うと、上達している感触が得られない。それはまずいと思う。
手が届く、技術に見合ったもので徐々にレベルが上がっていく。それは手応えを感じられていいと思う。
趣味で持つのだったら、一番良いもので(を使って)、『眺めているだけで幸せ』というのもいい。『徐々に』がいいと思う。
人間は手応え、達成感とか満足感があればあるほどいいと思う。「一番良いものを買って満足」というのは違うと思う。自分の技術が追いついてくることで満足(感)を味わってほしいですね。
趣味か仕事かで異なるが、イチローさんは、一番良いものを「買うことだけ」で満足するのではなく、その「良いもの」に合うように自分のスキルを徐々に上げていくことの大切さを説いた。
小学生時代のグラブに関するエピソードで話に説得力が増す
司会から「そうやって道具と付き合ってきたんですか?」と問われると、イチローさんは小学生時代に少年野球に取り組んでいた頃の話を切り出した。
「僕は小学5年生までは毎年ぼろぼろになるレベルのグラブでした。毎年、新しくなるのですが、それでは道具に対する愛着もなかなか生まれない」と当時を振り返った。
続けて、「(そこで)小学6年生の時に、軟式野球でしたけど、硬式の一番良いグラブを買ってもらったんですよ。感動しちゃって。その時のグラブの香りを忘れないし。ずっと使いました。枕元に置いて。それからですね、道具を大事をする気持ちが強く芽生えたのは。(だから)最終的に良いものを持つのは物凄く大事なことです」とした。
司会から「道具に愛着が生まれると、スキルや技は良くなるのでしょうか、関係がありますか?」と問われると、イチローさんは「関係あります」と断言。
その理由として「大事にするんですよ。プレー(の内容)も。だから、1つのゴロを捕るフライを捕るということが、自分(の体)に染み込んでくる。どうでもいい道具を使っているとそれが遅いし気づけない。(だから)大事にするってすごく大事です」としていた。
一つの質問から飛び出したイチローさんの“道具論”。そのこだわりが、前人未到の安打記録と記憶に残る華麗な守備に繋がっているのかもしれない─。