映画配給大手「東映」の元社員の女性が、ドラマの制作現場などでの性的ハラスメントや過重労働で精神疾患を発症したとして、中央労働基準監督署に労災申請した。6月22日付。
訴えの経緯は?
女性が加入する労働組合「総合サポートユニオン」などによると、女性は2019年に入社し、テレビ朝日系のドラマ「相棒」を担当する制作部に配属されたほか、20年からは「仮面ライダーリバイス」のプロデューサー補佐(AP)を勤めていた。
女性によると、19年12月から20年2月にかけて、「相棒」の撮影現場などで60代の男性スタッフ2人から性的ハラスメントを受けたという。
業務連絡のために交換したLINEで飲食に誘われたり、「会いたいです」と言われたりした。手袋の上から手を握られたこともあったという。このほか、「彼氏はいるか」と聞かれ、肩も触られたと訴えている。
さらに、12日以上にわたって連続勤務をしたり、1か月あたりの時間外労働が143時間に上った月があったりしたとも主張する。
女性は「相棒」の制作時の2020年2月、過重労働とセクハラ被害で体調を崩し、翌21年6月に休職。同年7月に適応障害との診断を受け、22年10月に退社した。
東映側は2022年12月、委託先の弁護士による調査の結果、男性スタッフらによる女性に対する複数のセクハラ行為を認定。
女性がハラスメント被害を会社側に訴えた際、相談を受けた社員や担当部署の対応が不適切だったことも認め、女性に対し謝罪した。
この女性の労働環境を巡っては、「仮面ライダーリバイス」のAPを務めていた際、違法な長時間労働や残業代の未払いがあったなどとして、中央労基署が22年4月、東映に対し是正勧告を出している。
「業界の最大手としての自覚を」
女性は記者会見で、「セクハラやパワハラ、過重労働は東映だけの問題ではなく、映像業界全体でよくあること」だと指摘。
「撮影現場のハラスメントや長時間労働でつらい思いをして退職せざるを得なかったり、社会復帰が難しくなったりするケースをたくさん見てきた。それでも、ついていけない人は『そういう業界だと分かっていて、好きだから入ったんでしょ』と言われ自己責任だとされ、落伍者だとみなされてしまう」と訴えた。
その上で、女性は「現在の映像業界の制作現場は、安心して作品作りができる環境ではない」と強調し、「東映は業界の最大手としての自覚を持って、映像業界の労働環境の改善に向き合ってほしい」と求めた。
東映「回答は控える」
総合サポートユニオンによると、東映はセクハラ問題などに対し謝罪した一方で、労働災害の原因や発生状況などを認める「事業主証明」への協力には応じなかったという。
東映はハフポスト日本版の取材に、「個別の事案に関する質問への回答は控える」「ハラスメント等に関する質問についても、複数の関係者のプライバシー上の関係もあり回答は控える」とコメントした。
<取材・執筆=國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版>