世界経済フォーラム(WEF)は6月21日、「ジェンダーギャップ指数2023」を発表した。
WEFは、世界の政治やビジネス界のリーダーが参加する「ダボス会議」を主催する非営利の国際機関。「ジェンダーギャップの解消を進めることは、包摂的で持続可能な経済成長を確保するために極めて重要」として毎年、この指数を発表している。
日本は調査対象となった世界146カ国のうち125位で、前年の116位から順位を下げた。なお、日本を挟んで124位はモルジブ、126位はヨルダンだった。
特に政治参加分野の格差は引き続き大きく、前年からほぼ横ばいの146カ国中138位で「世界最低レベル」の結果に。経済分野については前回(121位)より少し順位を下げ123位だった。
■政治分野138位
ジェンダーギャップ指数は、「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」の4分野のデータで、各国の男女格差を分析した指数。
4分野の点数は、いくつかの小項目ごとの点数で決まる。小項目を集計する際は、標準偏差の偏りを考慮したウェイトをかけている。 ただし、4分野の点数から算出される総合点は、4分野の平均になっている。スコアは1を男女平等、0を完全不平等とした場合の数値で、数値が大きいほど男女格差の解消について高い評価となる。
「政治参加」については、以下の3つの小項目で評価される。
・国会議員(衆院議員)の女性割合(131位、スコア0.111)
・女性閣僚の比率(128位、0.091)
・過去50年の女性首相の在任期間(80位、0)
日本では2018年に「政治分野における男女共同参画推進法」が成立。男女の候補者ができる限り均等になるよう、各政党に男女の候補者数の目標を定めるなど努力義務を課しているが、「均等」にはほど遠い。
この法律が成立して初めて迎えた2021年の衆院選では、候補者全体に占める女性の割合は17.7%、当選者に占める女性の割合は9.7%にとどまる結果になった。
続く2022年の参院選では、候補者の女性割合は33.2%、当選者の女性割合は28%と、いずれも過去最多となったが、「2025年までに国政や地方選挙の候補者に占める女性を35%に」という政府の目標には届かなかった。
2023年の統一地方選では、市議選の当選者の女性割合が22%と、初めて2割に達した。町村議選の当選者の女性割合は15.4%と過去最高だが、いまだに1割代にとどまっている。
また、今回の統一地方選を経て、女性議員が50%以上となった自治体は9つとなった。少しずつ前進も見られるが、世界を見ればその歩みは遅すぎるのではないだろうか。
■経済分野は123位
「経済的機会」分野は、以下5つの小項目で評価される。
・労働参加率(81位、スコア0.759)
・同一労働での男女賃金格差(75位、0.621)
・収入での男女格差(100位、0.577)
・管理職ポジションに就いている数の男女差(133位、0.148)
・専門職や技術職の数の男女差(-)*スコア、順位の記載なし
経済分野については、2021年(117位)、前年(121位)と連続で順位を落とし、今年は123位に。労働参加率や管理職ポジションに就いている数の男女差のスコアが下がったことが要因のようだ。
世界銀行が3月に出したデータでも、日本の男女格差は先進国の中で最下位、特に労働分野で遅れをとっており、「起業」では女性は男性の75%、「雇用」は50%、「賃金」は25%の恩恵しか受けていないことが明らかになった。
政府は6月13日、「女性版骨太の方針 2023」を発表し、女性の所得向上・経済的自立に向けた取り組みの強化を掲げた。
方針では、プライム市場上場企業に対して「2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める」「2030年までに、女性役員の比率を 30%以上とすることを目指す」など具体的な目標も盛り込まれた。
また、男女の賃金格差の開示義務を、常時雇用労働者301人以上の企業から、101人〜300人の企業にも拡大する検討も行われる予定だ。
なお、全体のギャップ指数で、東アジア・太平洋地区19カ国中で日本は最下位だった。
■1位はアイスランド、世界の現状は
ジェンダーギャップ指数2023で1位に評価されたのは、14年連続でアイスランドでした。2位以降はノルウェー、フィンランド、ニュージーランド、スウェーデンが続いた。
レポートによると、ジェンダー平等への動きは停滞し、格差是正にはあと131年かかる見込みだという。WEFは、「女性は男性よりも高い失業率に直面し続けている」と指摘。
リンクトインが世界163カ国の状況をまとめたデータによると、「リーダーシップのポジションに採用される女性の割合は、過去8年間、世界的に毎年約1%ずつ着実に増加してきましたが、2023年にはこの傾向が逆転し、2021年の水準となっている」ようだ。
リンクトインのグローバル公共政策担当、スー・デューク氏は「私たちは、経済的なショックや逆風を女性が負担していることを常に見てきました。これはシステム的な問題であり、これに対するシステム的な対応が必要なのです」とコメント。
「包括的な雇用対策、女性のトップ職の可視化、そして特にSTEMなどの高成長・高収入セクターにおける女性のスキル向上とキャリア成長の機会は、この懸念すべきトレンドを修正するために役立ちます。私たちは今行動を起こす必要があるのです」(デューク氏)
■ジェンダーギャップ指数とは
各分野での国の発展レベルを評価したものではなく、純粋に男女の差だけに着目して評価をしていることが、この指数の特徴だ。ジェンダーギャップを埋めることは、女性の人権の問題であると同時に、経済発展にとっても重要との立場から、WEFはこの指数を発表している。