国立大学協会の永田恭介会長(筑波大学学長)は6月までに、「ChatGPT」に代表される生成系AI(人工知能)を大学で使う上での留意事項をまとめた声明を発表し、「各国立大学はそれぞれの判断に基づき一定の方針を定め、明確なルール化を図ることが推奨される」との見解を表明した。
アメリカ企業のOpenAIが開発し、簡単な指示で文章を自動的に生成できるChatGPT。利用が急増する一方、大学での利用や制限について文部科学省は「方針は検討中」としており、判断は大学側に委ねている。
教員に任せたり、リポート作成など一部の場面での利用のみを禁じたり、積極的な利用を推奨したりと、国立大学の間でも対応はさまざまだ。
永田会長は生成系AIの利用により「人間や社会そのものの変容を導くことが想定される」との認識を示した。「(生成系AIの)負の側面を克服して、新しい技術に展開させていくことが求められる」と強調した。
「負の側面」として▽プライバシー侵害▽機密情報の漏洩▽大量のデータの出自がはらむ問題点▽データにバイアス(偏見)が含まれる可能性ーーなどを指摘。生成系AIの利用にあたっては「当面、それぞれの利用機関が一定の考え方に基づいて自律的な運用を行うことが求められる」と述べた。
その上で、国立大学の教育では「生成系AIの利用を一律に禁止することは求めない」と表明。「レポートや論文、課題等の作成において、学生が安易に生成系AI を利用することで教育効果等が得られない」といった懸念の声が上がっていることを踏まえ、大学ごとの「明確なルール化」を推奨した。
国立大学の中には、生成系AIの使い方の方針を「検討中」とし、現時点で明確なルールが定まっていない大学もある。
永田会長は、国立大学での生成系AIの利用をめぐり「積極的に推進する立場と懸念を示す立場が同じ学内で相対して存在する事態も生じうる」と指摘。
その上で、「(対立する)2つの立場の両立を図りつつ、いかにして新しい科学技術を自分のものとして、国立大学の使命を達成していくか、真摯に検討されることを望む」と呼びかけた。
〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉