「不同意性交等罪」を創設、性交同意年齢は引き上げ。改正刑法が成立、どう変わる?

不同意性交等罪や撮影罪の創設、性交同意年齢の引き上げ、公訴時効の延長、「性的グルーミング」の処罰化ーー。大幅な変更となる今回の刑法改正のポイントをまとめました。

性暴力被害の実態に合わせ、性犯罪の規定を見直した刑法改正案が6月16日、参議院本会議で全会一致で可決されました。

これにより、明治時代から110年以上続いていた性交同意年齢(13歳)が初めて引き上げられるなど、規定が大幅に変更されます。

盗撮行為を規制する「撮影罪」を盛り込んだ新法案も同日、可決されました。

「同意のない性的行為」を性犯罪として処罰するため、構成要件となる行為を具体的に示した「不同意性交等罪」の創設などを柱とする今回の法改正。具体的にどう変わるのでしょうか。ポイントをまとめました。

( ※ 刑法改正案の原文・「撮影罪」の法案原文

性犯罪の規定を見直す刑法改正、どう変わる?
性犯罪の規定を見直す刑法改正、どう変わる?
HuffPost Japan

(1)不同意性交等罪の創設

現在の「強制性交等罪」(177条)は、「暴行または脅迫」を用いることが、「準強制性交等罪」(178条)は「人の心身喪失もしくは抗拒不能」に乗じることが、それぞれ罪の成立要件となっています。

今回の改正では、両罪を一つに統合した上で「不同意性交等罪」に名称を変更します。

さらに、次の8つの行為や原因により、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し、もしくは全うすることが困難な状態にさせる」またはその状態にあることに乗じて性交した場合を罪の成立要件としています。

▽8つの行為  ※( )内は原因

1)暴行または脅迫を用いる(暴行または脅迫を受ける)

2)心身の障害を生じさせる(心身の障害がある)

3)アルコールや薬物を摂取させる(アルコールや薬物の影響がある)

4)睡眠や、その他意識が明瞭でない状態にさせる(意識が不明瞭な状態にある)

5)同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがない

→不意打ちの状態を想定

6)予想と異なる事態に直面させて恐怖させる、または驚がくさせる(恐怖し、または驚がくしている)

→恐怖やショックで体が硬直してしまう、いわゆる「フリーズ」状態

7)虐待に起因する心理的反応を生じさせる(虐待に起因する心理的反応がある)

→長期間にわたって性的虐待を受けることで、拒絶する意思すら生じない場合など

8)経済的または社会的な地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる(憂慮している)

→教師から生徒、スポーツの指導者から選手に対する行為など

また、強制わいせつ罪(176条)と準強制わいせつ罪(178条)も同様に統合し、「不同意わいせつ罪」に改称されます。

「不同意性交等罪」の構成要件は?
「不同意性交等罪」の構成要件は?
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(2)性交同意年齢

性行為への同意を自ら判断できるとみなす年齢は「性交同意年齢」と呼ばれ、日本では明治時代に13歳と制定されて以降、一度も変わっていません。

今回の改正で、性交同意年齢は16歳に引き上げられました。ただし、13歳以上16歳未満に対しては、被害者より年齢が5歳以上上の行為者だった場合のみ適用されます。

年齢差の条件は、同年代同士の自由な意思決定による性的行為を処罰対象から外すために設けられました。

(3)「性的グルーミング」も処罰対象に

性的な行為を目的に子どもを手なずける「性的グルーミング」の処罰規定も、改正案に盛り込まれました。

16歳未満の子どもに対し、わいせつ目的で騙したり誘惑したりして面会を要求する、お金を渡すと約束して会うことを求める、といった場合も罪に問えることになります。

さらにオンライン上でのグルーミング行為を想定し、性交や性的な部位を露出した映像をSNSなどで送るよう求めた場合も処罰対象となります。

いずれも被害者が13歳から15歳のときは、行為者の年齢が5歳以上上であることが適用の条件となります。

(4)時効の延長

性暴力の被害申告の難しさなどを踏まえ、性犯罪に関する公訴時効はいずれも5年延長されます。

「不同意性交罪」(現在の強制性交罪)の時効は10年から15年に、「不同意わいせつ罪」(現在の強制わいせつ罪)は7年から12年にそれぞれ延びます。

被害者が18歳未満の場合は、18歳に達するまでの期間がこれに加算されます。

(5)体の一部や物の挿入も「性交」扱いに

現在の強制性交等罪は、男性器(陰茎)を膣や肛門、口腔内に挿入、または挿入させる行為を処罰対象としています。

改正刑法では、「膣または肛門に身体の一部または物を挿入する行為」も性交と同じ扱いにすると定めています。

(6)「撮影罪」の新設

盗撮は現在の刑法に規定がなく、各都道府県の条例で規制してきました。ただ、地域ごとに罰則や対象となる行為にばらつきがあることなどから、刑法での規定を求める声が上がっていました。

改正案とともに可決された新法案には、性的な部位や人が身につけている下着などの盗撮を処罰する「撮影罪」が盛り込まれました。

性的な部位やわいせつ行為の盗撮、第三者への提供などが処罰対象となります。

◇ ◇

改正刑法の附則には、施行の5年後、性被害の実態などを踏まえて施策のあり方に検討を加え、必要がある場合には措置を講ずること、政府が性被害の実態や被害申告の困難さについて必要な調査をすることが盛り込まれました

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