自民党の有志議員からなる「明るい社会保障改革推進議員連盟」が3月、女性の健康を守り、さらなる活躍を進めるべく「女性の健康増進に向けた政策パッケージ」をとりまとめ、加藤勝信厚生労働大臣に提出しました。
注目は、「職場における女性の健康増進」として、健康診断の項目に「女性の健康に関する問診項目」を追加することを求めている点。更年期症状といった女性に多く見られる不調を、社会全体で取り組むべき課題と捉えています。
経済的損失は4200億円
月経困難症や更年期症状などの不調は、生活の質を著しく損ない、仕事上のパフォーマンスを低下させます。近年は更年期症状が社会にもたらす損失が特に注目されており、パフォーマンスの低下、退職や昇進の辞退によって発生する経済的損失は約4200億円とも言われています。
こうした現状を鑑み、2022年2月には岸田首相が衆院で「女性の更年期支援策を検討する」と発言。3月には厚労省が「更年期症状・障害に関する意識調査」を行い、更年期症状による損失を社会全体の課題と捉える動きが強まっています。
にもかかわらず、現在の健診では、更年期症状をはじめとする女性に多く見られる不調について医師が聞き取ったり、検査をしたりする機会は設けられていません。更年期症状に悩む人が治療のきっかけを得るには、忙しい合間を縫って自ら受診し、思い当たる症状について相談する必要があります。
人によっては、自身の症状が更年期によるものだと気付かないこともあるはず。健診で見つかりやすい生活習慣病などと比較して、更年期症状で治療に至るハードルは高くなっています。
女性が「健康課題に気付ける環境」を
事業者に実施が義務付けられている健康診断の項目は、女性の健康を守ることを十分想定して設計されているとは言えません。必須の項目は肝機能検査や血中脂質検査など、男性に多い生活習慣病を発見するためのものが中心。女性の命にかかわる子宮頸がんや乳がんの検診は義務ではなく、オプション扱いになっています。
今回の提言では、月経困難症や更年期症状についての問診だけでなく、骨粗しょう症の検診にも触れています。骨粗しょう症は閉経後の女性に多い病気のため、女性ができるだけ長く安心して働くためには、早期の発見と対策が欠かせません。また、健診休暇を設けるなどして、働く人が健診を受けやすい環境の整備を図ることも求めています。
更年期教育の重要性
提言では、公教育における健康教育の充実にも言及。生理をはじめとする女性の思春期以降の健康に関するメカニズム、女性が現代社会で置かれている状況について教育し、女性の健康に関するリテラシーを広く向上させることの重要性を説いています。
これまでの公教育では、更年期に焦点が当たることはほとんどありませんでした。その結果、更年期にどのような症状が現れるか、どう対処すべきかについての知識は、周囲だけでなく当事者にも不足しています。今回の提言を受けた政府が健康教育を充実させることで、社会の理解が深まり、更年期症状によってライフプランやキャリアを諦める女性が減ることが期待されています。