目的がなんであれ、早起きするのは辛いし、何年続けても慣れることはない。
子どもの頃、私たちの多くは親などからの優しい声かけで目覚めていたが、時と共に変化し、大人になるとほぼスマホに頼るようになる。
警報器のような大きなアラーム音や、鳥のさえずりのような癒し系の音など、朝目覚める時の音は、安らかな朝(とは限らないが)を迎える手助けをしてくれる。
スマホの種類を問わず、着信音ライブラリにはすでに数多くの選択肢があり、アプリをダウンロードすれば更に多くのサウンドから選ぶことができる。また、お気に入りの曲を朝の目覚まし音に設定することも可能だ。
こうした広い選択肢の中で、いったい何がベストなのだろう。効果的で素晴らしい目覚めに導いてくれるサウンドはどれなのだろうか。
ハーバード・メディカル・スクールの睡眠医学部門研究員で神経科学者のシドニー・アテン博士は、どの音を選ぶにしろ、気持ちよく目覚めるための第一歩は良い睡眠をとることだという。
アテン博士は「人によって個人差がありますが、成人は平均約7〜9時間の夜間の睡眠が必要です」と述べ、必要な睡眠時間はいくつかの要因によって決まり、遺伝子が大きな役割を果たすという。
あなたの環境や社会経済的地位、ライフステージや心身の健康も、良質な睡眠が取れるかどうかを左右する重要な要素だという。(例えば、あなたが子どもの育児や高齢者の介護をしているかなど)「住んでいる場所や寝ている場所、光の強さなど、環境が大きな役割を果たしています」とアテン博士は話す。
つまり、気持ちよく目覚めるには、よく眠ることが必要だ。一方、よく眠っても、ひどい目覚まし音のせいでストレスを感じて起きることもあり得る。では、どうすれば良いのか。
ロイヤルメルボルン工科大学の研究者が2020年に発表した小さな研究によると、メロディのないニュートラルなサウンドは、朝のもうろうした時間を長引かせる可能性があるという。つまり、目覚まし音選びを間違うと、日中も眠気を引きずることになりかねない。
そこで、自分で実験してみることにした。
3種類の目覚まし音で自ら実験した
私は平日の月曜日から金曜日までの朝、3つのグループに分けた目覚まし音を試してみた。
1つ目のグループは、iPhoneの着信音ライブラリにある「アラーム」のような、毎日飛び起きたい人に向けて開発されたと思われる、とても大きな警報器のような音。
2つ目はAppleのデフォルト設定になっているアラームの「レーダー」のような、1つ目よりは大きくないものの、高音で繰り返される音。
3つ目はiPhoneの「ハープ」など、メロディがあって落ち着く音だ。
私はこの実験を3週間続けた。
1. 大きな目覚まし音
この実験ではまず、「アラーム」を目覚めし音に設定した。5日間連続で毎朝同じ時間に、このトラウマになるような音で目覚めた。
実験初日から「目覚めにこれほど悪い音はない」と思った私は、5日目にはそれを確信した。怯えながら目を覚まし、隣人を起こさないようにすぐにスマホに手を伸ばした。「アラーム」音が鳴った途端、心臓がバクバクし、パニック状態で起きた。
アテン博士によると、これは体に負担となり、平和な朝を迎えるには最適ではないだろうと言う。「強いアラーム音は、体に大きな負担をかける可能性があります。寝た状態から起き上がるだけでも十分に負担なのに、大きな音で目を覚ますと、1日にさらにストレスがかかり、心拍数も上がるので、最適とは言えないかもしれません」
たとえ素晴らしい睡眠がとれたとしても、目覚まし音のせいでストレスやイライラを感じながら起きることになりかねない。私の経験では、Appleの「アラーム」を試した時、実際にそう感じた。
2. 中間的な目覚まし音
次の段階では、Appleのデフォルト目覚まし音である「レーダー」音を試してみた。起床時に「アラーム」音の時ほど恐怖を感じなかったが、それでも心臓がドキドキし、不安な気持ちになった。
アテン博士によると、このようなタイプの目覚まし音はしっかり役目を果たし、寝付きの悪い人でも起こすことができるという。(つまり「アラーム」の不快な実験をする必要がなかったということだ)「深い眠りについていたとしても、ほとんどの人はこの音で起きれるはずです。もし起きれないなら、より良く効率的な睡眠を得るために、就寝前の習慣を見直すべきかもしれません」
またアテン博士は、自分に最適な目覚まし音を理解するのに役立つ睡眠慣性の概念について説明した。睡眠慣性とは、「目覚めた後に感じる意識がもうろうとした感じ」のことで、数秒から数分、人によっては1時間も続くこともあるという。
これは基本的に、起きてるけど起きていないような状態で、私の場合、約5分から10分ほど続くことに気づいた。
なぜそれが最適な目覚まし音を選ぶことに関係するのだろうか?
前述のロイヤルメルボルン工科大学の研究によると、目覚まし音の種類によって、人の睡眠慣性の時間が増減するというのだ。研究では、匿名の参加者50人が好きな目覚まし音についてのアンケートに答えた。結果では、メロディの無いサウンドが睡眠慣性の時間を増加させることが分かり、研究者を驚かせた。
この研究の筆頭著者であるスチュワート・マクファーレン博士は声明で、「目覚めが悪いと、最大4時間の間仕事のパフォーマンスが低下し、大きな事故につながっていると指摘されています」と述べた。「びっくりするようなビープ音の目覚ましが覚醒を高めると思いがちです。しかし、私たちのデータでは、予想外にも、メロディのある目覚まし音が重要な要素であることがわかりました」
この理由から、「レーダー」音も私に最適な目覚まし音ではないと分かった。朝、この音が鳴るとびっくりするだけでなく、目覚めるのに心地良くなく、眠気が長く続く...つまり、睡眠慣性が長くなった。
3. リラックスさせるメロディのある目覚まし音
3週目には、iOSデバイスにダウンロードされているAppleヘルスケアアプリの睡眠セクションにある「鳥の鳴き声」音を設定した。この週は、目覚めが格段に良くなった。
「鳥の鳴き声」は、これまでの2つの目覚まし音のように、私をびっくりさせたり動揺させたりすることはなかった。それは大きな改善で、毎日リラックスした気持ちで目覚めた。
でも、平日はとても早起きの私だが、本来は朝方のタイプではない。だから、この目覚まし音に完全に納得してはいない。庭で鳥が楽しそうに鳴いているのを聞くと、「私の目覚まし音みたいだな」と反応してしまう。もしかしたら、私はこの実験で鳥の鳴き声に嫌悪感を抱くようになってしまったのかもしれない。
そこで私は、「自分の好きな曲」を目覚まし音に設定する、という選択肢を思いついた。
私の場合は、テイラー・スウィフトの「Fearless」だ。でも、この曲を目覚まし音にしたら、嫌いになってしまいそうで怖かったから、すぐに着信音を変えた。だって、テイラー・スウィフトに嫌悪感を抱きたくはなかったから!
音と感情を関連づけるのは明らかに可能で、私はテイラー・スウィフトに対してネガティブな条件反射を持ちたくなかったのだ。
それで、私がどうしたかって?私は睡眠慣性の間、完全に音を排除することがベストだと考えた。目覚まし音をバイブレーションに設定し、その5〜10分後、つまり私の睡眠慣性が終わる頃に、「ハープ」音が鳴るよう設定した。
そうすると、いろんな音に動揺させられずに「もうすぐ起きるんだ」と理解する時間があった後に、実際に起きる時間にはリラックスした音が知らせてくれる。
自分にとって最適な目覚まし音を見つけるには、自分が朝意識がもうろうとしている時間の長さを知ることが大切だ。朝起きてからいつの時点でしっかり覚醒したと感じるかを意識して欲しい。
ハープの音や好きな曲など、メロディーのある音を選ぶと良いかもしれない。(メルボルンの研究者の1人は、ビーチボーイズの「Good Vibrations」や、ザ・キュアーの「Close to Me」は良い選択肢だという)
スマホのバイブレーションを利用する方法もある。ただし、微妙すぎて気付かず寝過ごしてしまうかもしれないので、注意が必要だ。
また、睡眠の段階を理解することも有効だ。軽い眠り、深い眠り、そしてレム睡眠がある。アテン博士によると、睡眠が深いときに目覚ましが鳴ると、起きにくいという。その場合には、「Sleep Cycle」のように、眠りが浅いタイミングに起こしてくれるアプリが役に立つ。例えば、6時半までに起きる必要がある場合、アプリは6時から6時半の間であなたが最も浅い睡眠段階にあるタイミングを選び(寝た時間によって異なる)、起きやすくしてくれる。
「誰にでも最適な目覚まし音」というものは存在しない。ライフスタイルや睡眠時間、朝の目覚めの悪さなどによって異なるからだ。
でも、私の実験結果から言えるアドバイスは、あの大きな「アラーム」音を避ければ、全てはうまくいくということだ。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。