「入管からは『荷物をまとめて帰りなさい』と面と向かって言われた。いつか強制送還されるかもしれないと思い、将来を考えられなくなった。義務教育をちゃんと終えて、高校、大学に進学したのに、途方にくれる日々」
ペルー人の大学4年の女子学生(21)は5月15日、東京都内で開いた記者会見でこれまでの人生をそう振り返った。女子学生は在留資格がなく、就労が許されず行動範囲にも制限のある「仮放免」の状態で暮らしている。
日本で生まれ育ち、ペルーを訪れたことはない。スペイン語はほとんど話せないという。
「(入管の)『ペルーへ帰りなさい』という言葉は間違い。日本で生きたいと思うのは当たり前のこと」として、国外への退去処分が決まった外国人の滞在を認める「在留特別許可」の必要性を訴えた。
現在は母と弟と3人暮らし。2016年には父がペルーへ強制送還され、「気が気でなかった」。
「私たちには無条件の愛を与えてくれる両親が必要不可欠。故郷である日本でただ親と暮らしたい」として、親子が引き離されることのないよう家族に在留特別許可を出すことを求めた。
女子学生は「私のような(在留資格のない)子どもが200人ほど日本にいる」と指摘。その上で、「子どもたちに私のように毎日、不安と恐怖を抱えて大人になってほしくない」と話した。
NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」は会見の同日に発表した声明で、子どもへの在留特別許可について「難民の送還を促進する改定案の可決の駆け引きに使うことは断じて許されない」と指摘。
その上で、「在留特別許可は法相の裁量で決裁できる」として、「送還の対象者に在留特別許可を認めることを求める」と表明した。
同法人の共同代表理事、鈴木江理子さんは会見で「子どもはどんどん成長し、このような(在留資格のない)状況に置かれていることが子どもの可能性を奪う」と指摘。「一刻の猶予もなく、直ちに子どもとその家族らに在留特別許可を出すべきだ」と話した。
会見では全国難民弁護団連絡会議の代表、渡邉彰悟弁護士も子どもや家族に在留特別許可を出すかどうかは「改定案と全く関係ない」と指摘。「在留特別許可を与えることを独自に進めるべき」と強調した。
◆入管法改定案
現行法では、難民認定の申請中の外国人は、一律で強制送還が停止される。
国連人権理事会の特別報告者らは日本政府に対し、国際人権基準を下回っているとして「徹底的な見直し」を求める共同書簡を4月18日付で送った。
〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉