「花嫁ではなく生徒であるべき女の子たちの希望や夢が押しつぶされそうになっています」(キャサリン・ラッセルユニセフ事務局長)
レポートによると、現在生存している推定6億4,000万人の女の子が、18歳未満で結婚、つまり「児童婚」をしました。これは「1年あたり1,200万人の女の子が18歳未満で結婚していることになる」とユニセフは指摘しています。
児童婚をした女の子の割合は、5年前と比べて21%から19%に減少したものの、SDGsのターゲットにも掲げられている「2030年までに児童婚ゼロ」を達成するためには、今より20倍以上の速度で減少させる必要があるといいます。
また、状況は地域によって大きく異なるようです。
世界で2番目に児童婚が多い地域が、サハラ以南のアフリカ。この地域は人口が急増し、世界の流れと逆行して「女の子の児童婚が増加する」と考えられています。このままでは児童婚がなくなるまでに200年以上かかると危惧されています。
ラテンアメリカとカリブ海諸国地域も児童婚根絶に遅れをとっており、レポートによると「2030年までに児童婚の地域別割合が2番目に高くなる見込み」です。
南アジアは「世界の児童婚減少の前進を牽引している」状況。しかし、南アジアには児童婚をした世界の女の子の45%が暮らしています。特にインドは大きな進展が見られるものの、依然として世界の児童婚の数の3分の1を占めているとユニセフは指摘しています。
中東・北アフリカと東欧・中央アジアも、「児童婚が着実に減少してきた期間を経て、今は停滞」。予断を許さない状況が伺えます。
紛争、気候関連の災害、新型コロナウイルスの影響が、児童婚推進の一因に
レポートでは、「紛争、気候関連の災害、そして新型コロナウイルス感染症の継続的な影響(特に貧困の増加、所得の大幅減、中途退学)が、児童婚を推進する一因となっている」と指摘。
その結果、「脆弱な環境に暮らす女の子」が児童婚に陥る確率は、世界の平均的な女の子の2倍にもなるといいます。
また、紛争関連死が10倍増加するごとに、児童婚の数は7%増加。降雨量が10%変動するごとに、児童婚が約1%増加し、気候変動がもたらす極端な気象現象は児童婚のリスクを高めると分析しています。
ユニセフは、「児童婚は過去10年間に着実に減少しているにもかかわらず、紛争や気候ショック、今も続く新型コロナウイルス感染症の影響など複数の危機により、これまで苦難の中でも成し遂げた成果が無となる恐れがあります」と警鐘を鳴らしています。
児童婚の影響は生涯にわたって続きます。レポートでは、「学校に通い続けられる可能性が低く、早期妊娠のリスクが高まり、ひいては子どもや母体の健康障害や死亡のリスクも高まる」と指摘されています。
ユニセフ事務局長のラッセルさんは、「世界は、危機に次ぐ危機に襲われており、弱い立場に置かれている子どもたち、とりわけ、花嫁ではなく生徒であるべき女の子たちの希望や夢が押しつぶされそうになっています」とコメント。
「公衆衛生や経済の危機、武力紛争の激化、気候変動の猛威によって、子どもを持つ家族は、児童婚に誤った救いを求めざるを得なくなっています。子どもたちの教育を受ける権利、そして彼らの人生に力が与えられることが保障されるよう、私たちは全力を尽くさなければなりません」と訴えました。