メットガラで讃えられたデザイナーに「静かな反抗」。ピンクのドレスが放ったメッセージ

多くの参加者が白と黒の衣装でカール・ラガーフェルドを讃える中、ピンクのドレスが訴えたメッセージとは
メットガラに出席したクアナ・チェイシングホース氏(2023年5月1日)
メットガラに出席したクアナ・チェイシングホース氏(2023年5月1日)
Dimitrios Kambouris via Getty Images

5月1日に、アメリカのニューヨークで開かれたファッションの祭典・MET GALA(メットガラ)をスマホやパソコンで目にした人も多いだろう。

2023年のメットガラのテーマは「カール・ラガーフェルド:美のライン」。

1983年にシャネルのクリエイティブディレクターに就任し、2019年に亡くなった世界的ファッションデザイナーでアーティストのカール・ラガーフェルド氏の功績を讃えた。

多くの出席者が、モード界を牽引したラガーフェルド氏に敬意を表して白と黒の衣装を着用し、主催者であるVOGUEのアナ・ウィンター編集長らが同氏を賞賛。

その様子は華やかではあったが、ラガーフェルド氏の辛辣な発言を忘れているかのようにも見えた。

ラガーフェルド氏は過去に「誰も、ぽっちゃりした体型の女性など見たくない」や「MeTooにうんざりしている」といった女性を侮辱するような発言をしてきた。

メットガラでは、こういった発言がなかったかのようにラガーフェルド氏が讃えられたが、ネイティブアメリカンのモデルで活動家のクアナ・チェイシングホース氏は、ドレスを通じて静かながらも象徴的な皮肉を投げかけた。

 チェイシングホース氏が身につけたのは、反抗的なパンクロックスタイルのドレスだ。シャネルはラガーフェルド氏が亡くなった後、「パンク・プリンセス」コレクションを展開した。

また、何より象徴的なのはドレスのピンク色だろう。

ピンクはラガーフェルド氏が好まなかったことで知られており、同時に同氏が公然と批判していたMeTooムーブメントでよく使われる色でもある。

Leave it to an Indigenous woman to remind the world, Karl Lagerfeld was a bigot, fat phobic and hated the colour pink.

Quannah Chasinghorse continues to slay the #MetGala.

Congratulations to Sota Scowi Designs for the beautiful beadwork! pic.twitter.com/HGvz8V12gR

— Nahanni Fontaine (@NahanniFontaine) May 2, 2023

MeTooムーブメントで多くの女性たちが性被害を告発した時、ラガーフェルド氏は声をあげたモデルたちを非難。Numeroの2018年のインタビューでは「下着を下げられたくないのであれば、モデルになるな!修道院に入ればいい」と発言している。 

当時、ファッション界の権力者だった白人男性であるラガーフェルド氏の、こういった態度に驚かなかった人は多いかもしれない。

その一方で、メットガラでラガーフェルド氏を大々的に讃えられたことを、少なくともチェイシングホース氏を含む一部の人々は疑問に感じたのかもしれない。

チェイシングホース氏に加え、俳優のヴィオラ・デイヴィス氏やモデルのナオミ・キャンベル氏らも、ピンクのドレスを身につけた。

Viola Davis wearing pink to the MET gala when Karl was known for hating pink. She’s an icon, she did what she had to do, she said “fuck that man”. I love it!! #MetGala pic.twitter.com/WvxIxwIbYW

— karen (@xrocknroll) May 2, 2023

Naomi Campbell wore a 2010 Chanel to the 2023 Met Gala: still stunning? https://t.co/6nzZYYehX6 pic.twitter.com/ODHUjF7ji4

— Kaiser@Celebitchy (@KaiseratCB) May 2, 2023

ラガーフェルド氏は優れたデザイナーだった。しかしそのことが、時代遅れの価値観で他者を傷つける言い訳にはならない。

セレブの中にも、良心を持ち、きらびやかさに目がくらむことなく既存のシステムに対して自分たちの意見を表明する勇気を持つ人たちがいる。

時にはボイコットではなく、出席することで抵抗を表現できる。

ハフポストUS版の寄稿を翻訳しました。

注目記事