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「なんとか一緒に生き抜こう」「差別なんかいらない」ーー。
LGBTQ当事者やホームレスなど「社会的マイノリティの人権」のために声を上げる『東京リベレーションマーチ』が4月22日、東京都渋谷区の神宮通公園を拠点に行われた。
きっかけは、性的マイノリティと社会的関連があるホームレスについて、同区で排除が進んでいること。開催日はあえて、国内最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)』のパレードの前日にした。
実行委員会は「TRPが企業を巻き込む商業ベースの形をとってきたからこそ、社会が少しずつ変わってきました。LGBTQコミュニティに果たしてきた役割は大きいと思います」と強調。その上で「TRPの会場では抗議や人権について発信するのが難しい側面もあり、取りこぼされている当事者が声を上げる場を作りたいと思いました」と話す。
この日のマーチに、プライドパレードなどで掲げられる「“ハッピー”プライド」という言葉はなかった。LGBTQ当事者やアライ、聾者やアイヌの人々など200人が「私たちは人間だ」「すべての差別をはじき飛ばそう」などと書かれたプラカードをもち、声高らかに人権が守られる社会の実現を求めた。
◆TRPとリベレーションマーチ、両方があることで「LGBTQがより生きやすい社会に」
「リベレーションマーチ」は、フランスなど世界各地で行われている。『東京リベレーションマーチ』の開催は、実行委の1人であるげいまきまきさんが2022年、渋谷区の美竹公園でホームレスの排除を見て、「人を人として扱わないことにショックを受けた」ことがきっかけだ。
実行委はトランスジェンダーや、性産業で働く人の支援者ら9人で構成。ホームレスやLGBTQ当事者などの人権のために声を上げようと思ったのは、両者に深い関連があることも大きい。トランスジェンダーであるというだけで、就労差別を受けたり物件の入居を断られたりし、路上生活者にならざるを得ない人がいるという。
開催日はあえて、国内最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)』の1日目と被せた。それは、「スポンサーなどの意向に縛られず、LGBTQ当事者が抱える問題や人権について発信できる場が必要だと思った」からだ。またTRPが開催される渋谷区は、「ダイバーシティ&インクルージョン」を積極的に進めているとしながらも、路上生活者の意向を尊重せず排除してきた側面もある。
実行委はその上で、「TRPのパレードでは『ハッピープライド』という言葉を使っています。でも、今とてもハッピーとは言えない当事者も多くいます。だからTRPと人権について声を上げる東京リベレーションマーチの2つがあることで、取りこぼされている当事者が減ると思うんです」と話す。
◆「ハッピーが救いになった。でも、それだけで良いのかな…」
『東京リベレーションマーチ』の拠点は、神宮通公園。実行委は「ホームレスが排除されている場所だから」と話す。この日は約200人の様々なマイノリティの人らが、虹色のグッズなどを身につけ、約2キロにわたって渋谷の街を練り歩いた。
「毎日生き抜いているうちらってすごい!」「差別がない社会を作ろう」ーー。バイセクシュアルの女性は、マーチでこう声を上げた。
参加した理由について「これまでプライドパレードで『ハッピープライド』という言葉に救われる部分がありました。でも、ハッピーだけで良いのかなって思ったんです」と吐露する。この日は前首相秘書官の差別発言や、いつまでたっても「LGBT理解増進法」すら成立しない現状に対して声を上げるために来たといい、「マジョリティと違う部分があるだけで、人権が守られない社会はおかしいと伝えられてよかったです」と話した。
実行委の1人・浅沼智也さんは「ダイバーシティを掲げる渋谷区で、いろんな人がいるということを見える化できたことは、大きな意味があったと思います」と強調。「悲しいことに攻撃の対象となることもありますが、声を上げないと社会は変わりません」とし、今後も続けていく方針を示した。
<文=佐藤雄(@takeruc10)、写真=坪池順(@juntsuboike)/ハフポスト日本版>