私たちはセックスを「若さ」と直結して考える、年齢差別的な社会に生きている。ある年齢に達すると、寝室での営みが減っていくと思っている人も多いだろう。
しかしそれは、国や個人によっても違うようだ。
コンドームなどを販売するジェクスが日本全国20~69歳男女5000人以上を対象に2020年に実施した調査によると、50代の男性の約45%、女性の約65%が、1年以上セックスをしていないと答えた。
しかし「セックスをしたい」と思っている50代男性は80%を超え、20代30代の男性よりも高かった。
一方、アメリカの2019年の調査によると、50歳以上のアメリカ人のうち43%が、自分の性生活は若い頃と「同じかそれ以上に大胆」だと答えている。また2021年の他の調査では、同年齢層の35%が若い頃より今の方が性欲が強いと述べている。
まだまだセックスへの情熱がある50代は多いのだ。
しかし、年を重ねて身体や生活が変わることで、寝室でも変化が現れるかもしれない。加齢と共に自分への期待値を調整し、新たな「基準」を築く必要があると臨床性科学者のローレンス・シーグル氏は述べる。
「55歳の人が25歳の人と同じレベルの性欲やスタミナを維持しようとすべきではありません。若い頃は自然にできていた事も、年を取ったらより努力や意識を注ぐ必要が出てきます」
そこでハフポストは、シーグル氏や他の専門家に、50代の人々がよく経験するセックスの悩みとその対処法を聞いた。
1. 性と加齢に対するネガティブな考え方
年を重ねてからの性への考え方は、私たちの性生活に大きく影響する。そしてその否定的な考え方は、「ほとんどの人が思っているよりずっと大きな問題」であると心理療法士のナン・ワイズ氏は話す。
「年を重ねてからのセックスについて、私たちは悪質な偏見や誤解を排除する必要があります。確かにホルモンの変化による影響はありますが、偏見がそれを悪化させています」
心理学者のシャノン・チャベス氏は、診療での経験から、50代の多くが若い頃よりも良いセックスをしていることが分かったという。「彼らはより自信があり、培った経験から自分の好みを分かっており、相手にそれを伝えることができるのです」
2. 膣が濡れにくい
閉経に伴い女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少すると、膣の乾燥を引き起こし、性的な機能に影響する可能性がある。そのため、閉経後の女性の約半数がこの症状に悩まされていると推測されている。
そのため、「50歳以上の女性は潤滑ゼリーを常備しておくと良いでしょう」とシーグル氏は話す。
前戯にもっと時間をかけることが助けになる可能性もある。興奮することで膣が濡れ、より快感が得られるという。もし性交をあまりにも苦痛を感じる場合は、口やおもちゃを使って楽しむことをシーグル氏は勧める。
3. 勃起と射精
男性は年を重ねるにつれ、勃起にも変化が起こる。だがそれは正常なことだ。
「以前と同じように自発的、反射的に勃起したり、それを維持したりするにはより多く、そして多様な刺激が必要になるでしょう。また、以前ほど硬くないことに気づくかもしれません」とシーグル氏は話す。
射精の量や放出力がかなり減少することもありうる、とシーグル氏は言う。
時々問題があることは珍しくないが、行為をしようとするたびに勃たない、もしくは維持できない場合は勃起不全の可能性がある。基礎疾患の兆候である可能性もあるため、医師に相談すべきだという。
そして、精力はペニスの性能が全てだと考えている男性もいるが、それは年齢を重ねた際に問題に繋がりやすいという。その意識こそが、勃起に影響する最も多い問題の一つだとワイズ氏は話す。
こうした状況を避けるために最も重要なことは、パフォーマンスのプレッシャーを取り除き、セックスの目的を最初から変えることだとシーグル氏は述べる。
「この快感を共有することだけを望み、射精があれば最高、なくても素晴らしい快感を共有することができる、という考えで行うと良いでしょう」
「オーガズムをゴールとしてでなく、快楽を共有した際の素敵な副効果と捉える事で、体験はより濃密なものになるのです」
4. 性欲の低下
ストレス、身体的・精神的な健康問題、薬の副作用、ホルモン値の低下などは、全て性欲低下の原因となる。
チャベス氏はホルモンの変化の影響についても言及し、「生理学や性欲だけでなく、疲労や気分の変化などのメンタルヘルスにも影響を与えるのです」と述べた。
また、ホルモンバランスを整え不要な症状を軽減するための方法として、ホルモンテストを受けることを提案した。
年齢を重ねることにより性欲が低下するのは「普通のこと」とした上で、ヨガや瞑想、一部の人にはホルモン補充療法などが役に立つかもしれないと述べた。
またワイズ氏は、ストレスを和らげることで性欲が高まり、幸福度が上がって健康になる可能性があると話す。
方法の一つとして、「ラジカル・アクセプタンス」を勧める。1日に1〜2回静かな場所で座り、「ありのままの自分で、ありのままの瞬間を過ごすことを自分に許可する」という。そして、鼻から長く息を吸い、吐き出す。
「吸う息より吐く息を長くすると、身体が神経系を回復モードに移行させ、心臓の動きがゆっくりになり、ストレスホルモンが減少します」とワイズ氏は言う。
日中ストレスが溜まってきたら、ゆっくり呼吸をしてみよう。
「このシンプルな習慣が全体的な幸福感を高め、寝室の中でも外でも、自分の欲望に気づく手伝いをしてくれるかもしれません」とワイズ氏は語る。
「快感を得るのは贅沢な事ではありません。健康な心と身体、そして価値ある人生のために必要不可欠なのです」
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。