ドラマ以上にドラマだった。列島が歓喜にわいた。劇的な結末は日本のみならず、世界中の野球ファンの胸に深く刻まれたことだろう─。
まさに何度も見たくなる、日本代表とアメリカ代表が戦ったWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の決勝戦の最後の場面。9回に大谷翔平選手がエンゼルスで同僚のマイク・トラウト選手から空振り三振を奪い、チームを世界一に導いた。
MLBは現地時間の3月22日、後世に語り継がれるようなあのシーンについて、“ある数値のデータ”を用いてその凄まじさを改めて紹介した。
あの名場面、MLBが分析...
最後の9回、抑え(クローザー)としてDHを解除して投手としてマウンドにあがった大谷選手。アメリカは9番から始まる攻撃。順当に抑えられれば、3人目の打者はトラウト選手だった。
最後は大谷選手とトラウト選手の同僚対決で終わる。そんな筋書きがあっていいのだろうか…。現地で、テレビの前でそんな風に思った人も多いだろう。
ところが、大谷選手は先頭の打者を四球で出塁させてしまう。このままだとトラウトは最後の打者にならない。しかし、次の打者をダブルプレーにきって取った。打球はセカンド正面へのゴロ。まさに、絵に描いたような併殺となった。
ランナーがいなくなって、2アウト。3-2で日本が1点のリード。日本は14年ぶりのWBCでの世界一まであと1アウト。一方のアメリカは窮地に追い込まれた。
そこからはまさに、まるで「2人だけの世界」だった。元々決まっていたかのようなシナリオ。
アメリカ代表の主将でもあるトラウトを打席に迎えると、ストレート中心に気持ちで押す投球を見せた大谷選手。フルカウントからの6球目、外角へ曲がるスライダーで空振り三振。球史に語り継がれる勝負は決した。
世界一を決めた瞬間、大谷選手は喜びを爆発させ、グラブと帽子を投げた。
MLBの公式サイトは、あの打席のトラウト選手のストライクが全て「空振り」によるものだったことに言及。続けて、その凄さを次のように紹介した。
「トラウトのこれまでの6174回の打席で、3回の空振りを記録したのはわずか24回(確率にすると0.39%)。また、それを過去に2回行った唯一の投手は、大谷と同じ日本出身のダルビッシュ有(パドレス)です」
1度の打席でトラウトから3回の空振りを奪うことの難しさを引き合いに、大谷選手のピッチングを讃え、ベテランとして侍ジャパン投手陣を牽引したダルビッシュ投手の素晴らしさにも言及した。
「野球の神様がいる」「映画みたい」などという声がSNSには溢れたが、大谷選手とトラウト選手の対決は改めて名勝負だったことを裏付ける分析だった。
大谷選手は試合前にチームのメンバーにこう話した。「憧れは捨てましょう」と。メジャー屈指の選手が集まるアメリカ代表に果敢に立ち向かい、見事、世界一になった侍ジャパン。
メジャーリーグでシーズンMVPを獲得していた大谷選手。今大会で日本代表で世界一、WBCで大会MVPという名誉も手にした。
早くも3年後の大会出場にも意欲を見せている大谷選手。この先の“物語”があるとしたら、それはどんなものなのか。一人の野球ファンとして楽しみだ。