世界の気候変動の専門家の意見は明らかだーー。
彼らの予想していた以上に地球が温暖化することはほぼ確実で、人類や動物界にとって恐ろしい結末を回避するための道は、とても細い。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は3月20日、気候変動に関する第6次統合報告書を発表した。
世界は気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えることを目指している。だがこの報告書では、危険だと警告されてきたこの転換点に今後10年の間に達する可能性が高いことを明らかにした。
一方、最悪の影響を回避できるかもしれないという希望も残っているという。
この報告書から得られる5つの重要ポイントをここで紹介する。
1. 気候変動はすでに地球を大規模に破壊している
IPCC報告書は、気候変動はハッキリと起きている、と明らかにした。地球はすでに、産業革命以前より平均1.1℃も温暖化し、世界中の生態系を変化させている。
温暖化は食料と水の安全保障に影響を与え、何百もの種を絶滅させ、多くの人間の命を奪うような災害を引き起こし、取り返しのつかない氷河の融解や海面上昇を招いている。
異常気象は激しさと深刻さを増しており、一部の地域は不当なレベルの損害と損失に直面している。気候変動に対し脆弱な地域には、推定33億から36億人が住んでおり、最も大きな影響を受けるのは、アフリカ、アジア、中央・南アメリカの多くの低所得国だ。
2. たった少しの温暖化も見過ごせない
報告書によると、世界のあらゆる地域が近い将来に気候災害の増加に直面すると予測され、世界中の生態系と人間社会を脅かしている。こうした脅威には、人命を奪うほどの酷暑や、病気、洪水のリスク、生物多様性の損失の増加などが含まれる。
これらは地球温暖化が進むごとに増加し、混ざり合い悪化する。報告書は、「こうしたリスクは、1.5℃、2℃の温暖化で、現在よりどんどん高くなる」とし、「温暖化が進めば、気候変動のリスクはますます複雑になり、管理も難しくなる」と指摘した。
3. 気候変動の影響は、現在も、そして今後も深刻であり続ける
世界中の食糧生産網と漁業の生産性は、温暖化が悪化した場合は急激に低下するだろう。
赤道に沿った広い地帯では、人間の健康を害するほどの暑さと湿度のリスクが増加し、一部の地域では厳しい気温が年間で数百日続く場合もあるかもしれない。
それらの影響には海面上昇も含まれ、もはや避けることはできない。IPCCは、世界が行動を起こさなければ、「転換点に達した時に引き起こされる変化など、気候システムにおける急激かつ修復不可能な変化の可能性と影響は増大する」と指摘している。
4. 温暖化すればするほど、多くの動物種が深刻なリスクに晒される
地球が適応できなければ、気候変動は世界に深刻で修復不可能なダメージを与えることになる。1.5℃の温暖化で種の損失リスクは大きくなるが、気温がさらに上昇すると、地球全体の生物多様性の多くが危険な温度条件に直面する可能性がある。
気候科学者のキャサリン・ヘイホー氏は、こうしたリスクはすでに被害を受けている海の生物(グレート・バリア・リーフなど)や、温暖な熱帯地域に住む動物にとって、より深刻になるだろうと指摘した。
5. 行動する余地はあるが、チャンスはどんどん小さくなっている
IPCC報告書は、将来の世代が生きる世界がどれだけ温暖化しているかは、現在、またはごく近い将来の決定次第であると警告する。
温暖化を1.5℃、または2℃に抑えるには、「温室効果ガスの排出を迅速かつ大幅に、多くの場合は直ちに削減する」必要がある。
今の所そのような意志表明はされておらず、現在実施されている政策では、地球温暖化レベルは科学者が望むよりはるかに高くなることが予想される。
温暖化を抑えるためには、世界が石油やガスプロジェクトを速やかに廃止・撤回し、クリーンエネルギーと気候緩和対策に毎年数兆ドル、つまり世界の政府や企業がすでに費やしている額の3〜6倍を投資する必要がある。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は20日、「1.5℃のリミットは達成可能だ」と話したが、そのためには「気候変動対策が飛躍的に進歩する必要がある」と述べた。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。