ロシア軍によるウクライナへの全面侵攻が始まってから、2月24日で1年を迎えた。これに合わせて国連総会の緊急特別会合が23日に開かれ、ロシアに即時停戦を求める国連決議に141カ国が賛成して採択された。
この緊急特別会合では、日本の林芳正外相が演説し、「想像してみて下さい」と各国に呼びかけた。「ある安保理常任理事国」が、祖国を侵略した上で「平和を呼びかけてきたとしたら、どうでしょうか」と問いかけたのだ。
ウクライナ領の一部を武力で制圧した上で、和平交渉を呼びかけているロシアを念頭にしたものだった。
林外相は侵略者の呼びかけを「不当な平和」と断じた上で、「このような行為が許されるのであれば、それは侵略者の勝利となってしまう」「世界は、野蛮な力と威圧が支配するジャングルと化す」と警告した。外務省の和文仮訳によると、全文は以下の通り。
1 平和の決議への賛成を求める
この総会議場にいる193の国連加盟国は、193の異なる立場を代表しています。かくも多様な意見も、ある一点においては一致し得ると私は信じます。すなわち、我々はみなウクライナの平和を望んでいるということです。少なくとも、我々のうち圧倒的多数はウクライナの平和を望んでいるのです。これは平和に関する決議案です。
しかしながら、平和は原則に基づくものでなければなりません。敵対行為は今すぐにでも停止すべきですが、それは必ずしも、包括的、公正かつ永続的な平和をもたらすものではありません。
想像してみて下さい。もし、ある安保理常任理事国があなたの祖国に侵略を開始し、あなたの領土を奪取した後で敵対行為を停止し、平和を呼びかけてきたとしたら、どうでしょうか。
私はこれを不当な平和と呼びたい。このような行為が許されるのであれば、それは侵略者の勝利となってしまうでしょう。地球上の他の場所においても悪しき前例を築くものとなります。世界は、野蛮な力と威圧が支配するジャングルと化すことになるでしょう。
2 平和は国連憲章の原則に基づかねばならない
平和は国連憲章の諸原則に基づくものでなければなりません。それゆえに、日本は『ウクライナにおける包括的、公正かつ永続的な平和の基礎となる国連憲章の諸原則』と題したこの決議案を支持します。本日お集まりの各国にも、この決議案に賛成票を投じるよう、呼びかけます。
ロシアはまず第一に、ウクライナから即時かつ無条件に軍を撤退させなければなりません。これは、この総会、事務総長、国際司法裁判所が求めてきたことであります。残念ながら、ロシアは総会決議も国際司法裁判所の命令もまるで紙くずのように歯牙にもかけていないようです。
また、ロシアは拒否権の濫用のみでは飽き足らず、無責任なレトリックを用いて核兵器保有国としての立場も悪用しています。核兵器の使用はもとより、ロシアによる核の威嚇は決して許されるものではありません。
ロシアはそのすべての行為について適切な形で責任を問われなければなりません。また、他の国連加盟国は直接にせよ、間接にせよ、侵略を支援することを控えるべきです。
この観点で、ベラルーシ修正提案は、ロシアの侵略が国連憲章の大原則に違反している事実から国連加盟国の注意を逸らす試みです。加盟国に対し修正提案に反対票を投じるよう求めます。
3 苦しんでいるのはウクライナだけではない
ウクライナの人々の悲惨な状況を想うと、胸が張り裂けそうになります。日本は国際社会の仲間達と共にウクライナへの支援を継続していく所存です。
同時に、地球上の他の多くの人々も同じように苦しんでいることを忘れてはなりません。自然災害、紛争、暴力、テロ、食糧・エネルギー危機、気候変動、感染症と、枚挙に暇がありません。
4 国連は試練の時:安保理改革を含む国連の機能強化
これらの問題に対処するためには統合されたテイラーメードのアプローチが必要であり、それこそ国連が得意とするところです。しかし、今、国連は試練の時にあります。国連は傷を負いました。我々はその信頼を回復する必要があります。我々は再び結集しなければなりません。より一層複雑化し、相互に関連す る今日の課題に対処するためには、国連全体を強化していかなくてはならないのです。
これには、安保理改革のみではなく、この総会、事務総長、 経済社会理事会、平和構築委員会や他の国連の諸機関の役割を強化することも含まれます。
5 2024年未来サミット・国連強化の年に向けて
来年は、我々がこの場に集うのは、この無意味な侵略戦争の2年目を迎えるためであってはなりません。そうではなく、我々は法の支配に導かれた平和に向けて取り組んでいくべきです。2024 年の未来サミットを平和のサミットとして、ここに集いましょう。2024年を国連強化の年として共に記念しようではありませんか。