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「承認されても、費用の問題、管理・運用の問題があれば、当事者がアクセスできません」
世界では80カ国以上で使われているが国内では承認されていない経口中絶薬。
国内でも審査が進み歓迎の声が上がる一方で、その管理方法をめぐり、複数の団体から改善を求める声が上がっている。
2月21日にも、医師や助産師などでつくる団体が厚労省に要望書を提出した。
何が起きているのか。
選択肢増えるが、管理方法は「国際的な状況と乖離が大きい」
経口中絶薬は1988年に世界で初めて承認され、現在は80以上の国・地域で使われている。WHO(世界保健機関)も薬剤による中絶方法を推奨。現在日本で審査中の「メフィーゴパック」は、36〜48時間を空けて2種類の薬を服用するものだ。
「メフィーゴパック」は1月、厚労省の専門家部会で「承認して差し支えない」とされ、2月28日まで行われているパブリック・コメントを経て、再び上部組織で議論される予定だ。
現在国内では、妊娠初期の人工妊娠中絶は手術しか選べず、自費で10万円ほどはかかる。経口中絶薬が正式に承認されれば選択肢は増えることになるが、現在示されている管理方法案は国際的な状況と差が大きく、アクセスを阻害しかねないという指摘が出ている。
まず、厚労省が示している管理方法の案は以下の通り。
▼中絶処置の資格がある医師に限って行う(母体保護法指定医)
▼販売当初、適切な使用体制が整うまでの間は、入院できる設備がある医療機関でのみ、入院や外来で処方される
▼流通や使用状況などを厳格に管理する
販売当初は入院可能な施設でのみ使用としているのは、日本産婦人科医会との協議によるもの。朝日新聞デジタルなどによると、その場合の費用は外科手術と同等の10万円前後が見込まれるという。
「女性が利用しやすい環境を」
産婦人科医や助産師、中絶や流産の当事者でつくるSAJP(Safe Abortion Japan Project)は21日、この管理方法案などについて厚労省に要望書を提出。
経口中絶薬を使用する際は、入院ではなく外来ベースで管理することに加え、母体保護法などの抜本的な見直しなども求めた。
SAJP代表の産婦人科医・遠見才希子さんは要望書提出後の会見で「女性が利用しやすい環境をつくるのが大切」と強調。
WHOによる中絶についてのガイドライン(概要)で、女性は医療従事者からの支援のもと自宅で経口中絶薬を服用し、自己管理する選択肢も推奨されていることなどに触れ、「国際的推奨に基づく運⽤、管理を」と求めた。
また、母体保護法で中絶の際は配偶者からの同意が必要とされているが、こうした規定や中絶に対するスティグマ(負の烙印)は、「安全な中絶へのアクセスを阻む原因になる」と指摘した。
13日に要望書を提出した、医師らでつくる「性と健康を考える女性専門家の会」も、費用の適正化や経口中絶薬の自己管理、配偶者同意の撤廃などを求めた。
WHOの「必須医薬品リスト」における経口中絶薬の平均価格は1000円余で、日本で見込まれる自己負担額とは大きく差があるという。
要望書では「薬剤の価格はもちろん、中絶完遂までのすべての費用を含めた自己負担額 が、海外に比較して高額なものとならないよう、厚生労働省による指導・監視を求めます」 としている。
パブコメ提出の方法は?
パブコメは名前や住所の入力をしなくても提出可能。
インターネットではこちらから受け付けており、承認や、使用の際の管理方法などについて、自分の意見を記入して送信する。
中段の「募集要項」のPDFを一度開いた上で、下段の「意見募集要領(提出先を含む)を確認しました」の部分にチェックを入れ、右下にある「意見入力へ」のボタンを押すと、入力画面が現れる。