ミックスルーツの人に「なに人?」と聞くのは失礼なのか。当事者が思いを語る

複数の人種的背景を持つミックスルーツの人たちは、こうした質問を日常的に受けている。そしてこれは日本国内だけでなく、「人種のるつぼ」とも呼ばれるアメリカでも同じようだ。
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「あなたは何人なの?」

「どこ出身なの?」

複数の人種的背景を持つミックスルーツの人たちは、こうした質問を日常的に受けている。

そしてこれは日本国内だけでなく、「人種のるつぼ」とも呼ばれるアメリカでも同じようだ。

アメリカの大学院に通うアユミ・マツダ・リベロさんは、あまりにも頻繁にこの質問を受けるため、答え方をマスターしていると言う。彼女はベネズエラ系日本人、より広い定義で言うとラテン系アジア人だ。

質問してきた相手が同じくミックスルーツであれば、繋がりを築こうとしていると考えて、ルーツを答える。しかし相手が白人であれば、より警戒するという。

「『なに人なの?』という質問は『どこ出身なの?』よりも失礼です。ミックスルーツの人は「エキゾチック」な希少品と見られることが多いからです。なに人か聞かれた時は、「私は人です」と答えます」

「どこ出身?」と聞かれた際は、彼女は人生の殆どを過ごしてきた場所である「バージニア州」と答えると言う。

「こうした答えにイラつく人もいますが、自分の民族的背景を話すか話さないかは私が決めることです」

マツダ・リベロさんは、こうした質問を頻繁に受けると言う
AYUMI MATSUDA-RIVERO
マツダ・リベロさんは、こうした質問を頻繁に受けると言う

彼女は、会話の流れでその質問が出てきたり、配慮された聞かれ方であれば、その質問を気にしない。例えば、スペイン語を話すか聞かれたら、その後民族的背景について聞くのは自然なことだ。

しかし多くの場合、その質問は配慮なくやってくる。

赤ちゃんの時にベトナムからアメリカの白人家庭に養子として引き取られた、ミックスルーツであるキム・ヌーナンさんは、民族背景が分かりにくい見た目をしているをしていることを自覚しており、その質問を気にしないという。

「『なに人?』と聞かれたら、相手の意図を読み取ります。純粋に興味があるだけなら、話をします。全てではないけど、白人家庭やコミュニティでミックスルーツの子どもとして育つのがどれだけ複雑なものかが分かるくらいはね」

映画監督キム・ヌーナンさんは、アメリカにおける人種アイデンティティのポッドキャストもしている
KIM NOONAN
映画監督キム・ヌーナンさんは、アメリカにおける人種アイデンティティのポッドキャストもしている

一般的に、人が理解し学ぼうとの善意から質問しているのであれば、苛立つような問題ではないとヌーナンさんは考えている。

それに彼は、質問の焦点を相手に返す方法も見つけてある。

「質問を聞かれたら、『あなたの出身地を先に教えてよ』と返すんです。そうすれば、相手にも質問の重さが理解できるでしょう」


「よそ者」の認識

現実には、多くのアメリカ人は人種と民族を混同しており、会話も不愉快なものになりがちだ。

人種と民族の違いについて、英会話学校を営むベルリッツの記事では、人種(race)は同じような身体的特徴を持つ人々の集団、民族(ethnicity)は、同様の文化的特徴を持つ人々の集団、と説明している。

混乱は理解できるが、問題は質問者がその人物の「よそ者」要素を指摘しようとしていると感じられることた度々あることだ。そして質問はしつこく、相手に何らかの「非アメリカ人」的要素を見つけるまで諦めない人もいる。

メリーランド大学のカウンセリング心理学教授のウィリアム・ミン・リウさんは、白人は他の白人を相手にそのような質問をしつこくすることはないとし、「多くの(アメリカの)白人は一般的に(アメリカ人について)白人のイメージを持っているので、白人以外の人を見ると、認知的に『外国人』『非アメリカ人』と見るように仕向けられているのです」とハフポストに語った。

日本の場合は、見た目が日本人もしくはアジア人ではないと思われると、「よそ者」と 認知され、こうした質問を受けることになる。


子どもが質問したら?

子どもは本質的に、自分の周りの世界に興味がある。そのため率直に「なに人なの?」という質問をする傾向がある。

臨床心理学者でペアレントコーチのジェニファー・ノーブルさんは、子どもが他の子にこうした質問をしたい場合は、敬意と純粋に興味があることを伝えるよう親が教えることが大切だという。

「ミックスルーツや人種マイノリティの子どもの多くは、相手が敬意と誠意を持ってその子の背景を知りたがっていることが分かります。だから、質問をして良いか、敬意を持って質問することを教えるところから始めるのが良いでしょう」

ノーブル氏は、敬意を持ち、相手が回答を拒否できるような質問方法の例をいくつか教えてくれた。

「どこから来たのか聞いてもいいですか?」
「あなたの名前は、どの国や民族のものか聞いてもいいですか?」
「あなたの人種、民族的背景を聞いてもいいですか?」

逆に、自分の子どもがミックスルーツや人種マイノリティで、こうした質問に対応する準備をさせたい場合は、そもそもなぜ人はそのような質問をするのかを説明することから始めるといいと言う。

「人は、見た目に対して一定の狭い先入観があると理解させることが重要です。人種差別や、メラニンが肌の色にどう影響するかの議論を敬遠する必要はありません」

違いを讃え、人種の問題について掘り下げた絵本を読むなど、年齢に応じたシンプルな方法もある。

「なに人なの?」と言う問いかけにどう答えるかについては、自分にとってしっくりくる答えを親子で一緒にあらかじめ考えておくと良いだろう。

例えば、「日本人と韓国人と白人です」などと、自分の人種や民族的背景をあげるのは、最もシンプルで正直な答え方だと言う。

「どこから来たの?」との質問も、シンプルな答えが1番だ。

「オレゴン州出身でアメリカ人です。でも民族背景で言うとメキシコ人です」と答えれば、自分の出身地を正直に言うだけでなく、人種や民族を加えて相手の理解を深めることができる。

また、しつこい相手やネガティブな印象を受けた場合は、「私は優しい人です」とユーモアで答えたり、相手に同じ質問を投げかける練習をするのも良いとノーブルさんは話す。

もちろん、子どもも大人同様、こうした質問に答えないという選択肢があることも知っておくべきだ。

「特に、質問者に敵意がある場合は、答えを拒否することができるということを子どもに理解させることは重要です」とノーブルさんは述べた。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。