世界では80カ国以上で使われているが国内では承認されていない経口中絶薬について、厚生労働省の専門家部会は1月27日、「承認可」とする意見をまとめた。パブリック・コメントを行った上で再び議論し、正式に決める。
現在国内では、妊娠初期の人工妊娠中絶は手術しか選べない。正式に承認されれば選択肢が増えることになる。
当面は入院設備のある医療機関のみで処方
部会で承認可とされた経口中絶薬「メフィーゴパック」は、イギリスの製薬会社・ラインファーマが2021年12月、厚労省に承認申請。妊娠状態を保つために必要なホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」を1錠飲み、36〜48時間後に子宮を収縮させる「ミソプロストール」を4錠服用する。妊娠9週0日以下の妊婦が対象だ。
120人が参加した国内の臨床試験では、ミソプロストール投与後24時間までに93.3%が中絶した。主な副作用は下腹部痛が30.0%、嘔吐20.8%。
部会では、薬が承認された場合の管理方法について、以下のような条件を示した。
・中絶処置の資格がある医師に限って行う(母体保護法指定医)
・販売当初、適切な使用体制が整うまでの間は、入院できる設備がある医療機関でのみ処方される
・納入や使用実績などを厳格に管理する
厚労省によると、入院は必須ではなく医師の判断に任されるが、外来での処方の場合も1剤目、2剤目とも医療機関で服用する必要がある。服用後、院内待機の時間を設けるような運用も想定されるという。
母体保護法では中絶の際は配偶者からの同意が必要とされているが、近年廃止を求める声が高まっている。この要件については、薬剤によるものであっても母体保護法にのっとって行われるため、配偶者からの同意が必要なのは変わらないという。
経口中絶薬は80以上の国・地域で使用、WHOも推奨
日本では現在、初期の中絶については手術に限られており、金属の器具を使ってかき出す「掻爬法(そうはほう)」が用いられることも多い。WHOは掻爬法などは「時代遅れの外科的中絶方法」と指摘。真空吸引法や薬剤による中絶方法に切り替えるべきだと指摘している。
承認の可否や管理方法について広く意見を求めるため、2月1日から28日までパブコメを行う予定だ。3月にも開かれる部会の上部組織である分科会で改めて議論し、正式に決定する。