5分で引き返した犬ーー。
北日本の日本海側を中心に、各地で大雪となった1月24日の夜。Twitter上に投稿された1枚の写真が、大きな注目を集めた。
写っているのは、1匹の犬。
散歩からわずか5分で引き返してきたというその犬は、玄関で立ち尽くしている。頭から雪をかぶり、しょんぼりとしているかのような表情とつぶらな瞳で、こちらをじっと見つめている。心なしか、寒さで体が縮こまっているようにも見える。
そんな様子の1枚に、Twitter上では3万件のリツイートと21万件の「いいね」が殺到。
「切ないお顔がたまらない」「シュールな表情がいい」「なんちゅう表情」と絶妙な表情に心を奪われる人や、「寒かったんだね」「表情が(寒さを)物語っててかわいい。めちゃめちゃ寒かったんやろうな」「『こんなに寒いなんて聞いてないんですけど……』みたいな(表情)」と犬が体験した寒さに共感する人が相次いだ。
「むしろ行こうと思った勇気を讃えたい」「寒かったね。あたたまりなされ」と、一度は極寒の散歩に出かけた犬を労る声も上がった。
ハフポスト日本版は、この日の犬の様子について、飼い主である投稿者(@nkuy_s2)に詳しい話を聞いた。
「意気揚々と散歩に出たはいいものの……」
飼い主の30代の女性によると、寒さを耐えきれず5分で帰宅したのは、推定9歳の雄犬、優(ゆう)くん。2015年から、女性を含む4人家族とともに、石川県内で暮らしている。
写真が撮影された2023年1月24日は、目の前が見えなくなるほどの猛吹雪だったという。
「この日は近所に住む母が、優くんと散歩に出かけました。
母によると、優くんは大雪の中、強風や傘が揺れる音を気にしながら、落ち着かない様子で歩いていたそうです。ですが、5分ほどで諦め、家の方向へとまっすぐに歩き出したとのこと。
意気揚々と散歩に出たはいいものの、家の中から見ていた以上の強風と寒さで、歩くのが嫌になったのでしょう」
帰宅した優くんは、家族に迎え入れられた。
「『もう帰ってきたの!?』と驚きました。 家族も『優くんがこんなに早く帰るなんて、よっぽど気分が乗らなかったんだね』と笑っていました。
気分によって早めに帰ってくることは今までにもありましたが、おそらく今回が(散歩時間の)“最短記録”です」
家族にタオルで全身を拭いてもらった優くんは、暖かいリビングで身体を「ブルブルッ」とさせ、自分でもしっかりと水気を払っていたという。
「優くんはその後、ご飯を食べ、おもちゃで遊んだり、ウトウトしたりと、いつも通り過ごしていました。
Twitter上では優くんの姿に大きな反響がありましたが、本人はそのことを知る由もなく、相変わらずの日常を過ごしています」
かつて地元のボランティア団体に保護され、「里親」を募集した末に、今の家族と出会い、一緒に暮らし始めたという優くん。
「今や、家族は何もするにも優くんが優先。思い通りにならず大変なことや、自然の厳しさを体感することもありますが、命を迎えた責任だと思って楽しんでいます。
優くんがいたからこそ出会えた人も、たくさんいます。私や家族に幸せを運んできてくれる、かけがえのない存在です」
〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉