もう二重に憧れるのはやめて、奥二重のありのままの自分を受け入れたい。
雑誌やSNSを開くと、ぱっちり二重まぶたのモデルやインフルエンサーがたくさん。私は二重に憧れて、まぶたにのり状の液体を塗って二重まぶたを作る、アイプチの「二重のり」を中学生の頃から長年愛用していました。
いかに「バレない」自然な二重を作るか、研究を重ねた時期もありました。時々、一重・奥二重の人のメイクも調べて試してみたけれど、しっくりこなくて挫折したことが何度もあります。そもそも一重と奥二重って違うし、奥二重にもいろんなタイプがあるんだよな…。
そんな私ですがある日、ふと思ったのです。「二重のり、卒業したいな」と。目も大きくないし、重めの奥二重、そんな自分の目を受け入れたいなと。
そこで「アイプチ 卒業」など色々調べていくと、実は2020年に、アイプチが一重・奥二重を活かすメイク商品を発売していたことが分かったのです。え?アイプチってイコール「二重のり」じゃなかったの?「アイプチする=二重にする」って動詞になっているくらいなのに?
どんな開発の背景や思いがあったんだろう?一重・奥二重を活かすマスカラとカーラーの「アイプチ ビューティ シリーズ」を開発・販売しているイミュ株式会社のアイプチのPRを担当する中村花芳(はるか)さんに聞いてみました。
アイプチが生まれたきっかけは「セロハンテープの女性」
そもそも二重のりを開発し始めたきっかけは昭和40年頃、社員が喫茶店で、まぶたがキラリと光る女性を見かけたことだったそうです。光ったのはセロハンテープ。その女性はまぶたにセロハンテープを貼って、二重を作っていたのです。
当時は舞台メイクの道具として二重のりのようなものはありましたが、一般的にはあまり知られていませんでした。「街ゆく女性の中にも二重になりたい人がいるんだ」と気づき、商品開発が始まったといいます。
「研究を重ね、2年後の昭和42年に二重のりの初代『アイプチ』を発売しました。アイプチは現在二重のり全般のことを指すように使われていますが、実は商標登録しているブランド名なんです」(中村さん)
その後、肌にやさしい保湿成分を配合した「アイプチ S」、厚みのあるまぶたでもしっかり二重にできる「アイプチ P」、目を閉じても自然な二重に仕上がる「アイプチ リキッドテープ N」など、時代のニーズに合わせて多くの「アイプチ ふたえまぶた化粧料」が誕生しました。
一重・奥二重用のメイク商品を作ったのはなぜ?
長年「二重になりたい」という人の希望を叶えてきた「アイプチ」。しかし2020年発売したのは、一重・奥二重を活かす「アイプチ ビューティ シリーズ」でした。
作ろうと思ったきっかけは、開発者の妹さんの、何気ないこんな言葉だったといいます。
「一重・奥二重用の商品って、二重にするものしかなくない?私、別に二重にしたいわけじゃないのに」
これまで二重になる商品を作り続けてきた開発者はハッとして、同じような思いを抱えている人が他にもいるのではないかと調査を始めました。
すると、「一重・奥二重の人は二重になりたいんでしょって決めつけられている」「一重・奥二重用のメイクは、アジアンビューティーとかクールビューティー系ばっかりで、自分のやりたいメイクじゃない」など、一重・奥二重に対する「決めつけ」にうんざりする声がたくさん寄せられたそうです。
「二重至上主義の社会に生きづらさを感じる人や、コンプレックスだと思っていないのに『一重・奥二重はコンプレックスだよね』と決めつけられるのが嫌だという気持ちに寄り添いたいと思って、一重・奥二重用の商品を開発すると決めました」(中村さん)
商品開発では「まつ毛」に注目
そうしてできた商品が、「ひとえ・奥ぶたえ用カーラー」と、「ひとえ・奥ぶたえ用マスカラ」でした。
なぜ「まつ毛」に注目したのでしょうか?中村さんは、徹底した調査や研究の結果だと言います。
「二重と一重の人を様々な観点で比べてみた結果、一重の人の方が『まつ毛の変化』で目の印象が大きく変わることが分かったんです」
実際に二重と一重の人で、まつ毛の角度ごとに「どの程度目がパッチリしていると感じるか」調査すると、二重は何もしない状態で「パッチリしている」と回答したのは77%、まつ毛を100°にあげた時点で92%の人が「パッチリしている」と回答しました。
一方、一重の人の場合、何もしない状態で「パッチリしている」と回答したのは8%、しかしまつ毛を130°にあげると、その割合が73%に上がったそうです。
「理想のまつ毛は『角度130°』。しかし一重・奥二重の人のまつ毛は、常に瞼の重みで押し下げられている状態なので、“根元からしっかり立ち上げ”、“瞬時に固定”する必要がありました」
一重・奥二重用のマスカラとカーラー、こだわりは?
それから約5年の歳月をかけて、「アイプチ ビューティ シリーズ」として「ひとえ・奥ぶたえ用カーラー」と、「ひとえ・奥ぶたえ用マスカラ」が誕生しました。
カーラーは、日本人の眼球の大きさに合わせたサイズとカーブになっていて、国内の職人さんが一つ一つ作っているそうです。「正しい使い方」をするとまつ毛がグッと上がります。
マスカラは「水分、油分、こすれ」によるにじみを防ぎ、カールキープ力の高さにこだわったそうです。ブラシは「なぎなた型」で目頭、目尻までしっかり塗ることができます。
「『今までマスカラはまぶたに付いてしまうので使っていなかったけれど、これは使える』といったような、嬉しい声をいただいています」(中村さん)
もちろん、どんなまつ毛のメイクが好きかは人それぞれ。ですが実際に自分のまつ毛がどこまで上がり、どんな目になるのか知っておくと、メイクの可能性がさらに広がりそうです。
アイプチはずっと「一重・奥二重の人」の味方
調査結果によると、2017年の時点では「二重にしたい人」と「一重・奥二重のまま自分の目を活かしたい人」は約半々だったそうです。しかし近年は自分の目をそのまま活かしたい人が増えている傾向だと中村さん。
最近行った調査では、「美はまぶたのタイプによって判断されるものではない」と回答した人が約70%いたと言います。
「アイプチは美を決めつけない、誰かのためではなく、自分が自分を好きになるためにメイクをする人を応援するブランドでありたいです。これからも自分の目を好きになるための選択肢を増やしていけたらと思っています」
今、メイクは女性だけのものではありません。様々なジェンダーの人も視野に入れているのか聞くと、「アイプチの商品は、ジェンダーを限定して開発していません」と中村さん。
「アイプチはジェンダーに関係なく、すべての一重・奥二重の人の味方です」
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どんな自分でありたいかは、一人の中でも変化があるものだと思います。
二重になりたい自分にも、ありのままの目を活かしたい自分にも、アイプチは寄り添ってくれていました。
私は今、ありのままの、奥二重の目を愛しています。