この1週間、イギリスのヘンリー王子についての情報がどんどん広まっている。
彼の回顧録『Spare』は1月10日発売予定だったが、スペインで誤って事前に発売され、その内容がすでに流出しているのだ。
一般的に「暴露」を含むことが多い回顧録。ヘンリー王子も、この本で自分の人生におけるプライベートな部分の詳細を語っている。そしてイギリスやアメリカのメディアとのインタビューでは、さらなる詳細が語られている。
ヘンリー王子は、兄、父、継母との関係についての非難や後悔に加え、初めてのセックスはパブの裏で年上女性が相手だったこと、アフガニスタンへの2度目の軍事遠征で殺した人数、ウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃のロイヤルウェディングでペニスが凍傷になったことなど、幅広い詳細を明かしている。
『Spare』がイギリス史上最も売れた王室の回顧録の一つになることはほぼ間違いないだろう。しかし、この本に書かれている全ての内容は、全世界に公表する必要があったのだろうか?それとも、ヘンリー王子は「情報の過剰シェア」の真っ只中なのだろうか。
王室で育ったヘンリー王子に共感することは難しい。しかし、自分の人生の中で、「情報の過剰シェア」をしたことがある人も多いのではないだろうか。
セックスと人間関係の専門家であるニキ・デイビス=フェインブルームさんは、このような行動にはいくつかの理由があると述べる。
なぜ人は、自分の人生について過剰にシェアする必要性を感じるのだろうか?
「理由としては、注目や承認への欲求、分別感覚の欠如、感情コントロールの必要性、シェアを推奨する社会、メンタルヘルスの問題などがあります」とデイビス=フェインブルームさんは話す。また、人から注目や称賛を得るための手段であったり、人間関係における健全な境界線の欠如の兆候であったりもするという。
一方、シェアすることには利点もある。「問題を共有することで、問題は半減する」という言葉があるほどだ。しかし理想的には、打ち明け話をする時は十分注意し、慎重に行われることが望ましい。
「個人情報を共有することで、人は自分の感情を処理し、人とのつながりをより感じることができます。グループによっては、それが正常、あるいは求められることもあります」
「情報の過剰シェア」をするとき、私たちはどんな精神状態なのか?
多くの人は、シェアする時、強い感情を抱いている。こうした感情は「注目や承認を必要としていたり、弱さや不安を感じていたり、他の人とより深いレベルで繋がりたい欲求」などを含むとデイビス=フェインブルームさんは説明する。
こうした感情は、個人の問題や重要なライフイベントの結果として生じる可能性があり、過剰に情報をシェアすることは、これらの感情を処理し、調整するための対処メカニズムとして機能するかもしれない、と指摘する。また、これらの感情は人間として自然かつ重要な一部だと知って欲しい、と話す。
「自分の情報を他人にシェアすることは、感情を処理・調整し、人と繋がりサポートを得るための健全かつ適切な方法となりえます」
しかし、親密な情報をシェアする前に、なぜそれをする必要があると感じるのか、自問すべきだという。
「シェアする欲求の背後にある動機を理解することで、健全な方法で自己開示するための見識を得ることができます」
また、自分が言おうとしていることが、周りに、そして自身にどんな影響を与えるかも考えるべきだ。
「健全な境界線を維持しセルフケアを行うことは、自身と他者を尊重した、思いやりのある方法で自己開示ができるようになるために役立ちます」
「過剰なシェア」と「弱さを見せる」の違い
デイビス=フェインブルームさんによると、この2つはよく混同されるという。
「『過剰なシェア』は多くの場合、不適切または見境のない方法で過剰に個人の情報をシェアすること。一方、弱さを見せることは、自分の感情、思考、経験について、不快で困難でもオープンで正直であろうという意思を指します」
どちらも自分の情報をシェアするが、重要な違いは、その意図と内容にある。
「『過剰なシェア』は、注目や承認欲求が動機となり、自身や他者への影響を考慮していない場合があります。一方、弱さを見せることは、より深いつながりと理解を促進するために、自分の経験についてオープンで正直であろうとする意思を含むのです」
「健全で適切な方法で行われた場合、弱さを見せることは信頼を築き、素晴らしい人間関係を育む強力なツールとなりえます」
なぜヘンリー王子は『過剰なシェア』をしているのか?
私たちは常に、個人が過剰に情報をシェアする傾向にあるさまざまな要因を考慮する必要がある。
「ヘンリー王子の場合、公人であること、そして重大なトラウマを経験したことが、感情への対処や他者と繋がる手段として、自分の情報を過剰にシェアしたいという欲求に繋がっているのかもしれません」とデイビス=フェインブルームさんは語る。
「また、特に幼少期にトラウマを経験した人は、不安、うつ、PTSDなどメンタルヘルスの問題を発症するリスクが高いということも、念頭に置いておくべきです」
「これらの条件は、感情のコントロールに影響を与え、自分の情報をシェアしすぎる傾向に繋がる可能性があります。個人の行動を評価し、サポートと理解を求めるには、こうした状況を考慮することが不可欠です」
このような状況で、メンタルヘルスの専門家に相談することは大きな助けになる。ヘンリー王子も、セラピーを受けていることを公表している。
■相談窓口の案内
生きるのがつらいと感じている人や、周りに悩んでいる方がいる人たちなどに向けて、以下のような相談窓口があります。
厚生労働省「困った時の相談方法・窓口」
まもろうよ こころ(電話・SNS相談)
いのち支える相談窓口一覧
#いのちSOS(電話相談)
あなたのいばしょ(SNS相談)
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こころのほっとチャット(SNS相談)
ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。