「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持つ者だけだ」
カタールで開かれているサッカー・ワールドカップで、日本代表は日本時間12月6日、決勝トーナメント1回戦でPK戦の末にクロアチアに敗れた。
重圧のかかる選手たちをたくさんの人が固唾をのんで見守った。そんな中、PK戦にまつわるこんな名言が、SNSで広がった。
Number Webによると、この言葉を発したのは1990年代にW杯に3度出場し、「イタリアの至宝」と呼ばれたロベルト・バッジョだ。
1994年のアメリカW杯。イタリア代表はブラジル代表と決勝戦でぶつかった。延長戦の末、PK戦にもつれこんだ。両チームとも1人目は失敗、2、3人目は成功。4人目はイタリアの選手が失敗した一方で、ブラジルの選手が枠内におさめた。
PK戦3-2、失敗すれば負けが決まる場面でイタリアの5人目を任されたのが、バッジョだった。
バッジョが放ったボールはクロスバーを大きく越え、イタリアは敗退。準優勝に泣いた。 冒頭の言葉はこのPK戦について語ったものだと言われている。
「ロベルト・バッジョ自伝 天の扉」(2002年、潮出版社)によると、94年大会のPK戦を振り返る文章の中で、バッジョは「何度も言ったことだけど、PKを外すことができるのは、蹴る勇気を持った選手だけだからね。あの時ぼくは決められなかった。それだけだよ」と述べていた。
4年後の1998年に開かれたフランスW杯でも、イタリアは準々決勝フランス戦でPK戦を経験した。バッジョは1人目を務めてPKを成功させたが、イタリアは敗退。5人目を務めて失敗したディビアジョを、バッジョが励ます姿が報じられた。
長友「必ず次につなげてくれる」
日本の敗退後、長友佑都選手はPKを蹴る重圧と戦った仲間たちをたたえた。
長友選手は「一生懸命最後まで戦った後輩たちと、勇気を持ってPKを蹴った選手たちをたたえてほしいなと思います。この悔しさを必ず彼らがこの先の日本サッカーに生かしてくれると思いますし、必ず次につなげてくれると思います」と話した。
【UPDATE:2023/2/14】
バッジョの発言の経緯を正確に説明するため、自伝内の発言を追記しました。また、98年W杯のPK戦の経緯についても追記しました。