匿名のTwitterアカウント『Dappi』による投稿で名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之参院議員、杉尾秀哉参院議員が東京都内のウェブコンサルティング会社に対し、計880万円の損害賠償などを求めた訴訟の第7回口頭弁論が11月25日、東京地裁(新谷祐子裁判長)であった。
訴状によると、『Dappi』は2020年10月25日、森友学園をめぐる公文書改ざん問題について、「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」などと投稿。小西議員らはツイートの内容は事実ではなく、名誉毀損にあたると訴えている。
小西議員らはこの訴訟に先立ち、『Dappi』の発信者情報の開示をプロバイダに対して求めた訴訟を起こし、東京地裁に開示が認められていた。投稿に使われたインターネット回線の契約者として開示されたのが、このウェブコンサルティング会社だった。
これまでに被告側は、従業員が投稿していたことは認めたものの、「私的にやったこと」などと主張。一連の投稿は、会社とは無関係だと反論している。
一方原告側は、『Dappi』の投稿は平日に集中し、土日にはほとんど投稿がなされていないことなどから、「投稿の頻度や内容からして、勤務時間内に片手間にできるものではない」と主張している。
投稿者は月給110万円→99万円に減給
この日、被告側は代理人が出廷。原告側の求めに応じて提出した給与明細の作成経緯などを明らかにした。被告側代理人は記者団の取材に、「(Dappiの投稿は)会社ぐるみでやっていたんだと原告側は立証しているので、それに対して反論していく」と述べ、投稿内容が名誉毀損に当たるかどうかではなく、投稿の「業務性」について争う姿勢を改めて示した。
原告側代理人も記者団の取材に応じ、Dappiの投稿について、Twitter社から開示された2020年11月17日〜2021年1月27日の72日間のうち、少なくとも37日分が被告企業のIPアドレスからアクセスされていたことを明らかにした。この期間の平日は48日間あり、「被告側は『テレワークを推進していたので出社していたのは平均2、3人だった』としているが、投稿者は77%の割合で出社していたことになり、『投稿は1人でやった』とは根拠づけられないのではないか。オフィスで周りが気づかないのも不自然だ」と述べ、投稿は会社の業務としてやっていたと主張していく方針だ。
また、原告側代理人によると、投稿者が受けていた「減給3ヶ月の懲戒処分」について、月給110万円から99万円への11万円の減給だったという。
次回の口頭弁論は2023年1月23日を予定している。
これまでの経緯は?
第1回口頭弁論は2021年12月10日に東京地裁で開かれたが、被告は出廷しなかった。関係者によると、被告は答弁書で、原告の被告に対する請求をいずれも棄却すること、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、請求の原因に対する認否については追って調査の上行う、とした。
2022年2月28日にあった第2回口頭弁論にも被告は出廷しなかったが、「従業員が私的にやったこと」などとする準備書面を提出。4月11日の第3回口頭弁論には被告側の代理人が出廷し、「従業員は就業規則違反によりしかるべき処分をした」などとする準備書面を陳述した。
5月27日の第4回口頭弁論では、被告側代理人が出廷し、会社支給のパソコンを使って投稿をしていたことのほか、「投稿者は1人で、減給3ヶ月の懲戒処分をした」とも明らかにした。8月22日の第5回口頭弁論では被告側代理人が、当該従業員を含む会社の業務内容や勤務体制などを明らかにし、「テレワークを推進していたため出社していたのは平均2、3人だった」とした。
9月30日にあった第6回口頭弁論では、被告側代理人が、従業員への懲戒処分は口頭で伝えたことや、被告企業の社長による従業員へのヒアリング結果をまとめた書面での報告書は作成していないことなどを明らかにしていた。
『Dappi』とは?
『Dappi』のTwitterアカウントは2019年6月に開設されて以来、5000件を超える投稿をしている。プロフィール欄には「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです。国会中継を見てます」とつづり、野党議員やマスコミの批判を繰り返し発信していた。
フォロワーは11月25日現在で約17万3000人。アカウントは現在も残ったままだが、発信者情報の開示請求が認められた後の2021年10月1日、菅義偉首相(当時)の投稿をリツイートして以降、更新されていない。