岸田文雄首相大臣が11月11日、葉梨康弘法務大臣を更迭する方針を固めたと複数のメディアが報じた。
葉梨大臣は9日に開かれた一部の自民党議員が出席する会合で「死刑のはんこを押すときだけニュースになる地味な役職」などと自らの職務について発言していたが、これに対し「職務を軽視している」などと批判が殺到していた。
法務省の“トップ”としての職責は、本当にこのように自虐できるものなのか。
「子ども向け」に作られた公式サイトを見てもそうは考えられない。実際に法務省の職務は多岐にわたっていて、そのトップに位置する責任は軽いものではない。
葉梨康弘法務大臣、“自虐発言”を3連発。公式サイトとは異なる内容
岸田首相は11日午前に開かれた参院本会議の場では、葉梨氏の処遇について「改めて職責の重さを自覚し、説明責任を徹底的に果たしてもらわなければいけない」などと述べて野党からの更迭要求を拒否していた。
しかし、直後になって考えを改めた形だ。
NHKニュースによると、葉梨大臣は9日夜に、自らが所属する自民党岸田派の議員のパーティーに出席して挨拶した。
葉梨大臣はその際、法務大臣の職務について「法務大臣になって3か月が経つが、だいたい法務大臣というのは、朝、死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」と述べたという。
さらに「今回は旧統一教会の問題に抱きつかれてしまい、ただ抱きつかれたというよりは一生懸命、その問題の解決に取り組まなければならず、私の顔もいくらかテレビで出ることになった」とし、「外務省と法務省は票とお金に縁がない。法務大臣になってもお金は集まらない。なかなか票も入らない」と自虐とも受け取れるような発言をしていたという。
10日にこのニュースが報道されると、SNSでは「職務を軽視している」「もっと(職務は)色々あるでしょう」などと批判が殺到していた。
公式プロフィールによると、葉梨氏は2003年の衆院選で初当選したのち、財務政務官や法務副大臣、農林水産副大臣を歴任。2022年8月の内閣改造で初入閣を果たしていた。
自身の公式サイトでは「国内治安、出入国管理、インテリジェンス等を担う法務行政の役割はますます重要になっています。これに加え、我が国の国力を維持向上させるための法制度整備も重要な課題です。私は、全身全霊でこれらの課題に取り組んで参ります」と記載していた。
多岐にわたる法務省の職務。そのトップとしての責任は「死刑のはんこ」だけなのか
法務省の公式サイト(子ども向け)では、部署や職務などが13の項目に分かれて丁寧に説明されている。
死刑の執行に関する命令を下すことは法務大臣としての重要な職務の一つだが、死刑制度そのものの是非が問われ、議論が続く中での今回の葉梨大臣の発言については「命や死刑制度を軽んじたもの」と批判されている。