俳優のアンジェリーナ・ジョリーの身体に群がる大量の蜂。ジョリーはそれに動じることなく、こちらをまっすぐに見つめている──。
アメリカの写真家ダン・ウィンターズが撮影したポートレート写真が、イタリアのシエナ国際写真賞の「Fascinating faces and characters」部門で入賞を果たした。
ジョリーの発案で撮影されたこの1枚の写真には、どんな意図が込められているのだろうか。
3日間シャワー禁止。18分で撮影
この写真は、2021年5月20日に「世界ミツバチの日」を記念して、ナショナル ジオグラフィックの企画として撮影されたもの。
ジョリーがアンバサダーを務めるフランスのスキンケアブランドのゲラン(Guerlain)は、ユネスコと共同で『ウーマン・フォー・ビーズ(Women for Bees)』プロジェクトを展開。ミツバチをはじめとした「花粉媒介者(ポリネーター)」は、世界の主要農作物の75%以上の種類に影響を与え、地球の生態系を維持することに貢献していると言われている。このプロジェクトでは、ジョリーが中心となって、生態系におけるミツバチの重要さや、持続可能な養蜂の実践、そして、女性の養蜂家の育成を広めている。
この写真は、1981年に、写真家リチャード・アヴェドンが撮影した養蜂家ロナルド・フィッシャーの写真からインスピレーションを得たものだ。
撮影ではジョリーを除く全員が防護服を着用し、静かで暗い場所で行われた。18分の間ジョリーは静止し続け、一度も蜂に刺されることがなく撮影は無事に終わったという。
ナショナル ジオグラフィックのインタビューによると、蜂の混乱を招かないよう、シャンプーや香水など様々な香りをつけることが禁止されており、ジョリーは3日前からシャワーを浴びないよう養蜂家から指導されたという。
撮影は身体に「女王蜂から分泌されるフェロモン」を塗り、さらに蜂が入り込まないよう鼻と耳に詰め物をした。
ジョリーは撮影について、こう明かしている。
「この撮影に挑戦した背景には、時に刺される危険性があるとされる蜂と人々はどうすれば共存できるのか伝えたいという気持ちがありました。
私たちはこの地球を共有しており、互いに影響を及ぼしあっている。そう感じるべきだし、私は実際に(撮影を通じて)そう体感しました」