「提訴した3年前よりも、日本語は下手になりました。95%の確率で日本に居られなくなると思い、日本語を勉強する必要がなくなったと捉えていたのです」
アメリカで日本人男性と同性婚したにもかかわらず、これまで安定して日本に滞在できる在留資格を認められてこなかったアメリカ人のアンドリュー・ハイさんは9月30日、都内で自らの支援者らに向けてそう語った。
ハイさんは国に対し、日本人男性の配偶者としての自らに「定住者」という在留資格を与えることなどを求め、東京地裁で約3年間争ってきた。
「どこか違う国に行くしかないと思っていました。でも、判決を受け、考え直せます」
この日、東京地裁はハイさんの請求を退けた。ただ、国はハイさんに「特定活動」という別の在留資格を認めるべきで、そうしなかった対応は「客観的には違法」とする見解を示した。
「同性婚の外国人配偶者に道を開く」
ハイさんは2015年、同性婚が合法化されたアメリカで日本人の男性と結婚した。当時、ハイさんは「投資・経営」という経営者などに与えられる在留資格を有して日本で生活していた。
その後、日本で経営していた会社の業績が悪化したことで、在留資格の更新が難しくなった。そこで、2018年以降、日本人男性の配偶者としての立場で、「定住者」という在留資格への変更を東京出入国在留管理局に申請したが、許可は下りなかった。原告側は、こうした対応の取り消しなどを求めていた。
ハイさんは現在、「短期滞在」という在留資格で滞在している。住民登録をしたり、国民健康保険に入ったりすることはできず、いつ更新できなくなってもおかしくない不安定な状況でもあるという。
一方、裁判所が着目したのは、ハイさんが求めた「定住者」とは別の在留資格だった。
法務省は、外国人同士で同性婚している場合は在留資格のない配偶者に対して「特定活動」の在留資格を与えることを定めている。ハイさんのように日本人と外国人の間で同性婚をした場合は当てはまらず、ハイさんに在留資格の変更は認められないままだった。
東京地裁は、こうした運用は憲法14条の趣旨(「法の下の平等」)に反すると判断し、ハイさんに「特定活動」の在留資格を認めなかったことは「客観的には違法」とみなした。
これを受け、弁護団は「入管が今回の判決を尊重するならば、日本人と同性婚している他の外国人配偶者にも『特定活動』の在留資格を付与する道が開かれる」との見解を示した。
一方、弁護団によると、判決では原告の訴えそのものは棄却されているため、地裁の見解は国に対して拘束力を持たないという。
このため、ハイさんは自らの在留資格が確実に認められるよう、控訴する方針だ。
〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉