内閣府の子ども政策の有識者会議の委員で、保育園運営もしている認定NPO法人フローレンスの駒崎です。
通園バスで園児死亡 車内に空の水筒 温度上がりすべて飲んだか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220908/k10013808391000.html
なぜ、こんなことが繰り返されるのか…。
今月5日、静岡県で起きた「通園バス女児死亡」の報道を聞き、悲しみを通り越して憤りさえ覚えます。
認定こども園の通園バスの車内で3歳の女の子が倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された今回の事件。
普段のバス運転手が急に休みとなったため、73歳の園長がバスを運転していました。
女の子は、5時間もの間、信じられないくらい暑い車内に取り残されていたことになるといいます。
空になった水筒が残されていたと知り、胸を鷲掴みにされたような気分になった。
もう、こんなことを繰り返しちゃダメです。絶対に。
「政府は何やってんだ」
そう思ったんで、調べてみたんです。
昨年7月、福岡県中間市の保育園で5歳の男の子が、送迎バス内に取り残され熱中症で死亡する事件が発生したのを覚えていますか?
厚労省などは同年8月、送迎バスを運行する場合、子どもの乗降時の座席や人数の確認を実施すること等、安全管理の徹底のための事務連絡を都道府県に発出しました。
事務連絡って言うのは、政府からの「これやってね」って言うお願いですね。一応、何らかはやったわけです。でも、お願いの紙を出しただけ。
一方、同様の悲しい事件が起きてしまった韓国では、政府の対応は全く違いました。
2018年7月、韓国ソウルで4歳の女の子が保育園バスに8時間も放置され、亡くなってしまいました。
この事件を受け、同年10月、韓国政府はすぐに道路交通法を改正※1。
改正法では、保育所や幼稚園の運営者に、バス車内の園児置き去りを防ぐ装置の設置が義務付けられました。従わない場合は、罰金も課されます。
この装置を使った仕組みは、「Sleeping Child Check System(寝てる子チェックシステム)」と呼ばれるもの。アメリカやカナダのスクールバスでも既に導入されているようです※2。
運転手は、エンジンを切ったあと、3分以内に車内の後部に設置されたボタンを押しに行かなければいけません。もし運転手がそれを怠ったら、アラームがなる仕組みになっています。
運転手の注意力に頼るのは限界があるため、運転手が後部座席まで歩いて見に行くための仕組みを導入したわけです。
いや、これ、日本でもやろうよ!って言うことなんですよ。
【早急にバス置き去り防止装置の設置を義務化すべき】
日本も、早急にこのようなバス置き去り防止装置の設置を義務化すべきです。
韓国のような「Sleeping Child Check System(寝てる子チェックシステム)」にするか、あるいは、人感センサーで子どもがバス内にいることを検知して知らせるシステム※3等にするか。
いずれにせよ、このような「人災」が二度と繰り返されないように、心ある政治家の方は、早いところ議論を始めてください。
「気をつけようね」じゃ事故は防げないんです。
亡くなった女の子のことを思うと、涙が出そうです。僕にも娘がいるので。本当に、暑くて辛かったろうに。
でも、このまま何もしなかったら、大人たち全員が同罪だと思うんです。彼女の死を、無駄にしちゃいけないんじゃないか。同じ思いをしている方々、ぜひ一緒に声をあげていきましょう。
最後に、今回お亡くなりになったお子さんに、心からご冥福を申し上げます。
※1 The Korea Herald “Korea enacts law to prevent kids from being left alone aboard school buses”
http://www.koreaherald.com/view.php?ud=20181015000311
※2 Teller Report “’Sleeping child check system’ will be introduced … Kim Hyun-ae”
https://www.tellerreport.com/news/—sleeping-child-check-system–will-be-introduced——kim-hyun-ae-.By7KctxEQ.html
※3 IEE S.A. “LiDAS – Life Detection Assistance System for improved school bus safety”
https://iee-sensing.com/automotive/safety-and-comfort/lidas/
(挿絵はエデュカーレ編集部の大枝桂子さんより頂きました)
(2022年9月9日の駒崎弘樹公式ブログ「空になった水筒が我々に問いかけるもの ー政府よ、置き去り防止装置の設置を義務付けせよ」より転載)
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