イギリスのエリザベス女王が9月8日、死去した。96歳だった。70年以上にわたって君主を務めたエリザベス女王を支えていたのが、2021年4月に99歳で死去した夫のフィリップ殿下。フィリップ殿下とエリザベス女王との70年以上の結婚生活は、イギリス君主の配偶者として最長だった。2人の軌跡を写真を通して辿る。
フィリップ殿下は、1921年6月10日にギリシャのコルフ島(ケルキラ島)で生まれた。
父親はギリシャのアンドレアス王子で、母親はバッテンバーグ家のアリス妃。
ギリシャとデンマークの王子の称号を持っていたが、激動の子ども時代を過ごしている。
フィリップ殿下が幼い頃、ギリシャで軍事クーデターが発生。叔父であるコンスタンティノス1世が王位を追われ、父親も国外追放されたために一家はパリに亡命した。
後の配偶者となるエリザベス王女に初めて出会ったのは1934年。エリザベス女王が13歳、フィリップ殿下が18歳のころだった。
ふたりはその後1939年7月に再会し、文通を始めた。
金髪碧眼、長身でハンサムなフィリップ殿下に、エリザベス女王が一目ぼれしたと伝えられる。フィリップ殿下は、ギリシア・デンマーク王家の出身だ。
「フィリップは美しいと言えるほどのハンサムで、エリザベス女王は13歳の時に再会してから、他の男性に目を向けたことがありません」とマジェスティのイングリッド・シュワード編集長はハフポストUS版に話す。
第二次世界大戦後の1947年、エリザベス王女が21歳の時にふたりは結婚。2人の結婚式はロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われた。
父王ジョージ6世の亡き後、エリザベス女王は1952年に即位。それから2人は長年にわたってイギリス国民とともに歩んできた。
結婚後、ふたりはチャールズ、アン、アンドリュー、エドワードの4人の子どもをもうけ、フィリップ殿下はイギリス君主であるエリザベス女王を長年支えた。
一方で、2人の生活が常に喜びに満ち溢れていたとは言い難い。長男チャールズ皇太子はダイアナ妃と離婚。ダイアナ妃は97年、交通事故で悲劇的な最期を迎えた。奇しくもエリザベス女王夫妻の結婚50周年の年だった。
当時は、エリザベス女王の対応ぶりも含め、王室批判が高まった。世論調査でダイアナ元妃の死が王制を弱体化させるとの意見も7割に達した。その年、エリザベス女王はフィリップ殿下のことを、「彼は私の強さであり支えです」と述べている。
それでもなお、イギリス王室は存続した。政治的中立を貫くエリザベス女王の姿勢は、国民から根強い人気と尊敬を集めた。
2015年、エリザベス女王は歴代国王の在位最長記録(63年216日)を更新。
ただ、2人とも高齢となり、近年は公務の軽減が図られた。エリザベス女王も複数のパトロン(後援者)から退き、フィリップ殿下は全ての公務からの引退を決断。後進にその役割を託した。
毎年11月の「戦没者追悼記念日(リメンバランス・デー)」の式典でエリザベス女王が毎年務めてきた慰霊碑への献花も、2017年はチャールズ皇太子が代行した。イギリス国内では「エリザベス女王の後」が徐々に意識され始めていた。
2017年には結婚70周年を迎えた。
フィリップ殿下は2021年4月9日に亡くなった。99歳だった。