今日(8月16日)、東京都心では、今年16回目となる猛暑日(日最高気温35℃以上)を観測し、年間「猛暑日」日数の最多記録を更新しました。
ひと昔前であれば、35℃以上なだけで驚いていましたが、最近は40℃以上を記録する地点も増えてきています。
35℃以上を表す「猛暑日」のさらに先、40℃以上を表す新しい言葉が必要な時期にきているのかもしれません。天気予報で使われる「言葉」から猛暑の実態をみていきます。
“猛暑日”という言葉。誕生したのは意外と最近だった
今月、民間気象会社が実施したアンケートで、40℃以上に“酷暑日”という名前を独自につけたことが話題になりました。
気象庁の定義では、1日の最高気温が35℃以上の日のことは「猛暑日」と言いますが、40℃以上はまだ正式な名称はありません。
地球温暖化の影響で、世界の気温は約150年で上昇しています。日本では都市化の影響も加わり、夏の猛暑が深刻化しています。
実際にデータをみてみると、東京の「猛暑日」日数は、1920~1990年頃まではさほど増えていませんが、特に2000年以降、日数が右肩上がりとなっています。
今年の東京都心では猛暑日が16日を数え、年間猛暑日日数が史上最多に。トップだった1995年と2010年の13回を、さらに上回ってしまいました。
実は「猛暑日」という言葉が正式な予報用語となったのは、2007年。35℃以上が頻発するようになったために制定されました。
それから15年が経った2022年、35℃どころか40℃が、毎年全国のどこかしらで観測されるようになってしまっています。
40℃以上にはまだ正式な名前はありませんが、何かしらの名前がつけられる日もそう遠くはないでしょう。もしかしたら今回話題になった”酷暑日”が正式に採用されるかもしれません。
実際、40℃以上の”酷暑日”を記録したことがある地点を見てみると(下記図)、32地点中24地点が、2000年以降に初めて40℃以上を観測しています。
気温の底上げの背景には「温暖化」も
今年の日本がここまで猛暑になる要因としては、去年秋よりラニーニャ現象が続き、猛暑になりやすい気圧配置(二段重ねの高気圧)が続いていることが挙げられます。
猛暑の直接の原因は気圧配置の要因ですが、地球温暖化や都市化は、気温を底上げする効果を果たしています。
ざっくりになりますが、気温の底上げは約150~100年前に比べて地球温暖化で+約1℃、都市化で+約1℃が目安です(夏場の場合)。地球温暖化に加え、都市化の影響もあり、猛暑が深刻化しているのです。
今年のような夏はむしろ“涼しい”?!温暖化が進んだ未来とは
猛暑の直接の原因は気圧配置ですから、二段重ねの高気圧が長続きしなければ、今年のような記録的な猛暑にはなりません。
逆に言えば、温暖化や都市化が解消されない限り、気圧配置さえ揃ってしまえば、いつでも同様の猛暑にはなり得るということです。
同じく記録的な猛暑を記録した2018年については、「温暖化がなければ、このレベルの猛暑は起こらなかった」という研究結果が出ています。
現在の温暖化に対する取り組みのままでは、パリ協定の目標(産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅を長期的に「2℃」以内に保つ)を達成することは難しく、すでに約1.09℃上昇しているため、猶予はあと約0.91℃分しかないという状況です。
このままいけば21世紀末には、今年のような暑さは、むしろ少し涼しいくらいになってしまうと予想されます。
先日の内閣改造では、西村康稔経済産業大臣がGX(グリーン・トランスフォーメーション)担当大臣を兼務することが発表されました。GXを進め、カーボンニュートラルの達成に向けて社会を変革していく方向に、国も舵を切っています。中国やインドなどの温室効果ガス排出量の多い国への働きかけも重要です。
【文:気象予報士 ・千種ゆり子、編集:湯浅裕子】