アメリカ昆虫学会(ESA)はこのほど、オオスズメバチ(Vespa mandarinia)の英語名を「アジアン・ジャイアント・ホーネット」から変更したと発表した。人種差別などを煽りかねない名称をなくすプロジェクトの一環で、アジア系住民へのヘイトクライム(憎悪犯罪)に繋がる可能性があると判断した。
■背景には差別感情の高まり
オオスズメバチはアジア原産のスズメバチで、日本などアジアの広い範囲に生息する。スズメバチとしては世界最大の種で、攻撃性・毒性が共に強いことから「殺人バチ」とも呼称される。2019年にアメリカとカナダの一部地域でも発見され、駆除対象となっている。
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このハチはこれまで「アジアン・ジャイアント・ホーネット」という英語名で呼ばれてきたが、アメリカ昆虫学会はこれを「ノーザン・ジャイアント・ホーネット」と改称すると発表した。「ノーザン」には「北方の」という意味がある。
昆虫学会は2021年に名称に関する新しいガイドラインを採択し、人種や民族名を表すものや、恐怖心を煽るものを禁止している。学会は今回の改称についても「アジア系住民への差別やヘイトクライムが増加するなか、害虫の英語名に『アジアン』を用いることは、意図せずして反アジア的な感情を増幅させることにつながる」と説明している。
また学会は、分類学上の観点からも名称変更は適切だと指摘。「スズメバチ属の22種は全てアジア原産か、あるいはアジアに生息しているため『アジアン・ジャイアント・ホーネット』は生態などの固有の情報を伝えるものではない」としている。
昆虫学会は今後、学術誌やSNSでの呼称を「ノーザン・ジャイアント・ホーネット」に改める。メディアや政府機関などに対しても変更後の呼称を使用するよう呼びかけていく方針だという。