「同意なくコンドーム外す行為は性的暴行になりうる」カナダの最高裁が判断示す

「『コンドームなしはノー』が『コンドームなしはイエス』を意味することはあり得ない」と裁判官。
コンドームのイメージ
コンドームのイメージ
boytaro Thongbun / 500px via Getty Images

カナダの最高裁判所は7月29日、性行為の最中に同意なくコンドームを外す行為は性的暴行で有罪になりうるとの判断を下した

カナダ最高裁は、コンドームを使うふりをしたり、パートナーの同意を得ずに外したりする「ステルシング」と呼ばれる行為は、「同意のある性行為」の法的な定義に反する可能性があると判断。

Sheilah Martin裁判官は「コンドームを使った性行為と使わない性行為は、根本的にも質的にも異なる身体接触の形」「コンドームをつけることを条件に性行為に同意した原告は、コンドームなしの性行為には同意していない」「イエスはイエス、ノーはノーを意味するだけ。『コンドームなしはノー』が『コンドームなしはイエス』を意味することはあり得ない」などと意見をまとめている。

この裁判は、ブリティッシュコロンビア州の男性が、パートナーの女性が事前にコンドームの着用を求めていたのに性行為中に着用しなかったというケース。女性はコンドームなしの性行為には同意していないと証言していた。

警察はこの男性を性的暴行で立件したものの、一審では原告(女性)が同意していなかった証拠がなく、詐欺的な行為をした証拠もないとして無罪となった。その後、ブリティッシュコロンビア州控訴裁判所が全員一致で再審を命じ、男性が最高裁に上告していた。

最高裁の今回の判断は、この事件の有罪・無罪について判断するものではなく、コンドームの使用に関する新しい解釈を示して再審を命じたものだ。

女性の権利擁護団体はこの判断を歓迎。法律や教育からジェンダー平等を目指すカナダの組織「Women’s Legal Education and Action Fund」のエグゼクティブディレクター、Pam Hrickさんはこの判断を「性の自己決定と平等に関する権利の土台となるもの」と位置付けた

■ 妊娠や性感染症の危険、精神的苦痛も大きく

ステルシングの被害にあった経験のある人は少なくない。

オーストラリア・モナシュ大学の2018年の研究では、女性の3人に1人(32%)、男性とセックスをする男性(MSM)の5人に1人(19%)が、ステルシングを経験している。

また、2019年に発表された研究では12%の女性がステルシングの被害にあったことを報告。別の研究では、10%の男性が、パートナーの同意なしにコンドームを外したことを認めていた。

また、ステルシングは被害者を妊娠や性感染症の危険にさらし尊厳を侵害するだけでなく、精神的苦痛も大きい。

上記のモナシュ大学の研究では、被害者の半数が精神的苦痛を経験。ステルシングは身体的・精神的に有害な影響を及ぼすことも明らかになっている。

NHKニュースによると、日本でもステルシングの被害を訴える声が相次いでいるというが、詳しい実態は明らかになっていない。

アメリカ・カリフォルニア州でも2021年、アメリカで初めてステルシングを違法と認定した州になった。州法の下で同意のないコンドームの取り外しは、被害者が加害者に損害賠償を求めることが可能になっている。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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