2022年上半期にハフポスト日本版で反響の大きかった記事を紹介しています。(初出:3月25日)
初めて入ったお店で店員さんに話しかけられ、二度と出せない愛嬌で受け答えしてしまった。お店を出る頃には「やってしまった...次が気まずくなってしまう...」と頭を抱えることに。
そんな体験を描いた5ページのマンガが、Twitter上で7000件以上の「いいね」がつき、話題になっています。「めっちゃ分かる」「自分だけじゃなくて安心した」「私の話ですか?!」と共感のコメントが多く寄せられました。
■超友好会話モードにギアチェンジしてしまう
作者は、神戸市在住のイラストレーター・漫画家で、「37歳ままならナイスなソロ生活」をTwitter上で掲載し続けている中島悠里さん(@jimapahinasu)。今回のマンガは「フレンドリー接客とギアチェンジの話」として、3月9日に投稿しました。
地元の茶葉専門店に初めて入ったところ、フレンドリーな店員に話しかけられます。
「積極的に話しかける接客のお店!」と焦った中島さんは、オフにしていた脳内の「会話スイッチ」を慌ててオンにします。ところが力みすぎて「超友好会話モード」に切り替わってしまいました。
「最近、台湾茶に興味あるんですがオススメとかありますか?」と店員さんに積極的に質問するなど、無理して本来の性格よりも明るく振る舞う結果に。帰り際には「二度と出せないMAXの愛嬌を初回で繰り出してしまった...これは次が気まずいぞ...」と頭を抱えます。
それから3ヶ月後、新茶が発売されると聞いて、もう一度お店を訪れることに。「あの人いませんように」と願いながらお店に向かうも、前回の店員さんは「またいらしてくださったんですね」と明るく話しかけてくれました。しかし、中島さんは物怖じして、ぎこちない対応に。
初回と異なる反応に戸惑う店員に「すみませんあの私はもうどこにもいないんです...!」と心の中で謝りながらお店を後に。
「愛想のさじ加減うまくなりたい...」と自分に不甲斐なさを感じたそうです。
■中島さんとの一問一答
ハフポスト日本版では、この作品を投稿した中島悠里さんに取材をしました。以下は一問一答です。
ーー今回のエピソードを漫画にしようと思ったきっかけは何でしょうか?
大変であろう接客業で店員さんに不快な思いをさせたくない、という思いと、いいお客さんに見られたい!という見栄の妙なせめぎあいがあっていつもギアを入れすぎるのですが帰宅したらどっと疲れてしまう…こんな思いをしているのは私だけなのだろうか…いや絶対他にも経験してる人いるはず…いるよね?いておくれ!という気持ちで描きました。
ーー今回の漫画に出てくる「会話スイッチ」は、どのように思いついたのでしょうか?
最初は心象風景を視覚化するために「積極的接客に緊急対応するため赤いランプが光警戒音を発する脳内の指令室に駆け込んで会話スイッチを強打でONにする」という一連の流れを描こうと思ったのですが、あまりに長すぎたため会話スイッチだけが残り、(そしてポケットから出すという簡易仕様)あんな感じになりました。
ーー店員の会話で「程よいさじ加減」の難しさに気がついたとのことですが、もしやり直せるとしたら、店員とどのように会話すればよかったと思いますか?
こちらが変に愛想よくして大げさに相槌を打ったり話を広げすぎず、必要なことと希望するものだけ伝えてニュートラルに行けばよかったかな…と思いました。愛想よくすることに気を取られてちゃんと話を聞けてない部分が多いので冷静になりたいです…しかし話過ぎて嫌な気持ちになるという接客ではなかったので、引き出した店員さんの手腕だなぁ…とも思いました。
ーー今回の「フレンドリー接客とギアチェンジの話」は、「すごくわかる」と共感する声が続出して、7000件以上の「いいね」がついてます。こうした反響をどう感じてらっしゃいますか?
みなさんやはり気を遣っちゃうんだなぁ…改めてさじ加減難しい!となりました。そして「美容院で同じ感じになっちゃう!」という方が多く、そういえば私も美容院の会話が苦手なので、必要最低限のことを過不足なくサラっと伝えられる人になりたいなぁ…と思いました。たくさんの方に共感してもらえて、不甲斐ない自分が救われた気持ちになりました。読んで反応くださった方、ありがとうございます。
中島さんによると、今回のエピソードは4月15日に発売された単行本『37歳ままならナイスなソロ生活』(オーバーラップ)に収録されているそうです。