SNSでよく見る「ダイエット広告」や「コンプレックス広告」。
画一的なボディイメージを押し付けたり、特定の体形や外見を嘲笑したりする画像や文言は、見る人の自尊心を下げ、メンタルヘルスに影響を与えることが、様々な調査で明らかになっている。近年は、そうした広告を見直す動きが広がっており、日本でも2020年9月にヤフーが体型、薄毛などのコンプレックスを煽る広告を禁止した。
画像共有サービスのPinterestでは2021年7月、減量を謳う文言や画像の掲載を禁止。「体型や体の大きさに関係なく、誰もが自分の居場所だと思える環境を作るため」に、ボディシェイミング(身体的特徴での中傷)やダイエット商品および「痩せるべき」と主張するようなコンテンツを禁止してきた。
2022年7月に発表された「ボディニュートラルレポート」では、減量に関する広告を禁止して1年で、「ダイエット」を含む検索が20%減少したことが明らかになった。
減量や特定の体系を理想化する文言・画像を禁止に
Pinterestは2021年7月、広告ポリシーを改訂。すべての広告で、「減量に関する文言や画像」「特定の体型を理想化または否定するような文言や画像」「BMI(体格指数)や類似の指標を参照すること」など、減量を謳う文言や画像の掲載を禁止した。背景には、コロナ禍で不健康な食習慣と摂食障害が特に若者の間で増加したという問題がある。全米摂食障害協会(NEDA)の指導と助言の下でポリシーが策定された。同社によると、Pinterestは主要プラットフォームの中でいち早くダイエット広告を禁じた企業だという。
「ダイエット」の検索が減少⇨「ボディシェイミングに関する名言」が増える
改訂から1年が経った2022年7月に、Pinterestは「ボディニュートラルレポート」を発表。ダイエット広告を禁止してから1年で、ユーザーの動向において、ボディイメージの検索にどのような変化があったのか調査した。
調査からは、「ダイエット」というキーワードを含む検索が、世界的におよそ20%減少したことが明らかに。一方、「簡単でヘルシーな食事」の検索数は65倍、「健康的な食事を摂るモチベーション」は13倍に増加。「ユーザーがPinterestでヘルシーな食事など、健康的な習慣にまつわるアイデアを見つけていることがわかった」と報告した。
さらに、ポジティブなマインドに関する検索が増えており、「ボディシェイミングに関する名言」は43%増加。この結果から、「ボディシェイミングに遭遇した際にポジティブな考え方を保ち、それらに対応しようとしていることがわかる」と分析している。
Pinterestの広告ポリシーの責任者であるサラ・ブロマ氏は、「Pinterestは、これを契機に業界他社も当社と同じ措置を取ることを呼びかけ、ある種の体型だけが理想的であるという考えがなくなることを願っています」とコメントしている。
厚労省も実態調査を始める
共同通信によると、厚生労働省は、健康などに影響が出やすいやせ形の若年女性を減らすために研究班を設置し、体形への意識や食事内容、生活習慣を把握する実態調査を始めるという。
政府は、BMI(体重を身長の2乗で割った体格指数)が18.5未満の「やせ」に該当する20代女性の割合を20%に下げる目標を設定しているが、2019年の「国民健康・栄養調査」では、20代女性の20.7%が「やせ」に該当した。