警察庁が2021年12月、差別的と誤解される職務質問を慎むよう求める文書を、全国の都道府県警に通知していたことが分かった。
人種差別的な職務質問は全国的な問題となっており、警察庁は2022年4月から都道府県公安委員会を対象に内部調査を始めている。
警察などの法執行機関が、人種や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすることは「レイシャル・プロファイリング」と呼ばれる。
在日アメリカ大使館は2021年12月、外国人が日本の警察官からレイシャル・プロファイリングの疑いのある職務質問などをされたとの報告があったとして、日本で暮らすアメリカ国民に対してTwitterで警告を出していた。
警察庁の文書通知は、大使館のツイートから11日後の12月17日付。
「人種、国籍、LGBTに対する差別との誤解を受けないよう」
警察庁に対するハフポスト日本版の公開請求で開示された文書によると、差別的な職務質問に関して言及しているのは「年末年始等における地域警察活動の実施に関する留意事項について」と題する地域だより。年末年始に向けて、警ら活動を強化することなどを求める内容だった。
この中で、「職務質問の対象となる者であるかを判断する際には、その容姿や服装等の外見のみを根拠とすることのないよう指導するとともに、人種、国籍、LGBTに対する偏見や差別との誤解を受けないようにするなど、職務質問の際における不適切・不用意な言動を厳に慎むよう指導を徹底されたい」と注意を呼び掛けた。
その上で、警視庁が作成した職務質問に関する資料を参考として添付している。添付された警視庁の資料『職質指導班だより』では、次のように記している。
「職質対象者を、容姿(髪型等)や服装など外見だけで選別していませんか!不用意な言動はトラブルのもとです!」
「近年、人種や国籍、LGBT等に対する偏見や差別が世界的に問題となっています。安易に外見のみで職務質問を実施した場合、『差別を受けた』などの抗議を受ける場合があり、大きな社会問題に発展する可能性があります」
職務質問の根拠となる「警察官職務執行法」(警職法)は、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断」し、犯罪を犯しているまたは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由がある場合に、相手を停止させて質問をすることができると定めている。
一方、海外にルーツを持つ人たちからは、こうした法律上の要件を満たさない差別的な職務質問を受けたとの訴えが相次いでいる。
ハフポスト日本版のアンケートには、人種や海外ルーツの見た目が職質の理由だと説明されたり、名前や日本語のアクセントを確認後に警察官の態度が変わったりしたという訴えが多く寄せられた。
東京弁護士会は3月、海外にルーツを持つ人を対象にした職務質問に関する調査結果(速報版)を発表。
過去5年ほどの間に職務質問を受けたことがあると回答した人のうち、76.9%が「外国人または外国にルーツを持つ人である」こと以外に警察官から声をかけられる理由はなかったと認識していると答えた。
(國崎万智@machiruda0702・ハフポスト日本版)
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