「同性愛とか色んなことで可哀想だと言って…」自民比例・井上義行候補の発言に波紋

出陣式での井上義行氏の発言。識者は「同性愛者や、様々な理由で子どものいない世帯を少子化のスケープゴートにしているとも受け取られかねない発言」などと批判する。
参院選の比例代表に自民党から立候補している井上義行氏
参院選の比例代表に自民党から立候補している井上義行氏
時事通信社

「同性愛とか色んなことでどんどん可哀想だと言って、じゃあ家族ができないで、家庭ができないで、子どもたちは本当に日本に本当に引き継いでいけるんですか」ーー。

参院選の比例代表に自由民主党から立候補している井上義行氏が出陣式でした発言に、波紋が広がっている。

井上氏は6月22日に行われた出陣式の第一声で、次のように述べた。

「今私は分岐点だというふうに思っています。なぜ分岐点か。それは今まで2000年培った家族の形が、だんだんと他の外国からの勢力によって変えられようとしているんです。昔は皆さん、考えてみてください。おじいちゃんおばあちゃんやお孫さんと住んだ3世代を。その時は社会保障そんなに膨れてこなかった。でも核家族だ、核家族だ、個々主義だ、こういうことを言っている」

「そしてどんどんどんどん、僕はあえて言いますよ、同性愛とか色んなことでどんどん可哀想だと言って、じゃあ家族ができないで、家庭ができないで、子どもたちは本当に日本に本当に引き継いでいけるんですか。しっかりと家族を産み出し、そして子どもたちが多く日本にしっかりと産み育てる環境を私たちが今作っていかなければいけないと思いませんか皆さん。その闘いでもあります」

(※該当部分は、以下の動画の7分50秒過ぎから)

識者「あまりに短絡的」

井上氏の発言に対し、「同性愛者への差別だ」などと批判の声が広がっている。

LGBTQ当事者らが生きやすくなる法整備を目指す「LGBT法連合会」事務局長の神谷悠一氏は、「家族を作るか、子どもを作るかで優劣をつけるのは優生思想的だ」とみる。「同性カップルを念頭に『子どもを作らない、つまり生産性がない』などと主張し批判を浴びた杉田水脈氏の過去の寄稿にも通じる」と指摘する。

さらに「同性愛者や、様々な理由で子どものいない世帯を少子化のスケープゴートにしているとも受け取られかねない発言。今回は加えて、核家族すら槍玉にあげているように見える。あまりに短絡的で、差別的だ」と批判。

神谷氏は「すでに子育てをしている同性カップルや、子どもをもたない選択をした家庭の実態をはじめ、現実に生活する多くの人々の姿が見えていないのではないか」と疑問を呈した。

自民党政務調査会の「性的指向・性自認に関する特命委員会」は2019年、「同性婚等に反対する理由として『同性婚を認めると少子化が進む』といった理由を述べる方がおられますが、現状でも少子化の進行が課題とされる中で、現在認められていない制度に理由を転嫁する根拠は特に見当たりません」との見解を示している

井上氏は1963年生まれ、神奈川県小田原市出身。内閣参事官補佐や内閣官房長官秘書官などを歴任し、第一次安倍晋三内閣では内閣総理大臣首席秘書官を務めた。

2013年の参院選で「みんなの党」(当時)から比例区で出馬し初当選した。同党の解党後、参院会派「自由民主党」に所属。前回(19年)の参院選では比例区で出馬し、落選した

出陣式での発言に関し、ハフポスト日本版は井上氏の事務所にコメントを求めており、回答があり次第追記する。

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