映画業界で、性暴力を受けたとする女性の証言が相次ぎ、業界内外から改善を求める声があがっている。
フリーランスによって支えられる映画制作の就労環境をめぐっては、以前から、過酷かつ不当な労働条件や低収入、あるいは多くの制作現場で契約書・発注書が交わされていない問題なども指摘されてきた。
業界全体の問題として議論が進む中で、多くの雇用を創出する大手の映画製作配給会社は、相次ぐハラスメントや性被害の訴えについて、どう受け止め、対策を講じているのか。
ハフポスト日本版では、業界を牽引する日本映画製作者連盟(映連)に加盟する、大手映画製作配給会社=東宝、東映、松竹、KADOKAWAの4社を取材した。
質問事項
4社に対し、文書で下記の点を尋ねた。
(1)ハラスメントや性被害の訴えが相次いでいることへの見解
(2)映画監督や、原作者の作家などからも声明が発表されていることへの見解
(3)ハラスメントや性加害を防止するために、現在の取り組み及び検討段階にある取り組み
(4)映画業界に従事する人がハラスメントや暴力の被害に遭うことなく安心して働くことができるために、映画製作配給会社としてどのような取り組みができると考えるか
東宝
※4つの質問に対して一括での回答
当社では、研修や講習を通じて社員へのハラスメント防止の周知と意識啓発を行い、また社内規程の制定やそれに基づく社内体制を整えるなどのハラスメントの防止に努めております。
加えて、2021年4月に経済産業省が公表しておりますとおり、当社が加盟している日本映画製作者連盟を中心に、映画制作現場の適正化に向けた業界ガイドラインの策定、映像制作適正化機関(仮称)の設置に向けた検討が目下行われており、本取り組みには当社も協力しております。この中では、ハラスメント防止に向けた対策も講じられる見通しであります。
東映
※4つの質問に対して一括での回答
弊社では、外部の研修を導入し、すべての従業員および制作スタッフに受講してもらい、ハラスメント防止に努めております。さらに、映画会社4社が加盟しております日本映画製作者連盟が映像制作現場の適正化に向けてガイドラインの策定、映像制作適正化の認定制度の運用に向けて進行中であり、関係団体・各社とも連携し労働環境の向上に取り組んでまいります。
KADOKAWA
※4つの質問に対して一括での回答
とても遺憾なことだと感じております。当社グループはいかなるハラスメント行為を許容いたしません。
その防止対策としては、プライバシーが守られ、匿名で相談することのできる相談窓口のほか、コンプライアンス違反などに関する通報を適切に処理するKADOKAWAグループ共通の通報窓口として、コンプライアンスホットラインを設置しております。当社グループの従業員(正社員・契約社員・嘱託職員・アルバイト・派遣社員)に加え、退職者および当社グループ各社の取引事業者が対象となります。
詳細は、下記をご参照ください。
https://group.kadokawa.co.jp/ir/esg/social/working_environment.html
https://group.kadokawa.co.jp/ir/esg/governance/internal_control.html
また、映画制作現場の適正化実証実験も行っており、制作現場での対応も実施していきます。加えて、個々のスタッフのハラスメント研修も実施しております。
松竹
※4つの質問に対して個別に回答
(1)ハラスメントや性被害の訴えが相次いでいることへの見解
多くの人々が関わる映画づくりにおいて、ハラスメントや性加害は、決してあってはならないことです。
映画の製作・配給を担う弊社としても、これ以上、被害を受ける方、傷つく人が生まれないよう、ハラスメントの生じない環境の整備が重要であると考えており、ハラスメントを根絶する具体的な施策等に取組み、社会全般からハラスメントを根絶する一助になればと考えています。
映画の制作現場の適正化(人材育成等を含む)については、製作から流通まで映画産業のすべての関係者が参画する映画業界全体の自主的取組みとして、映像制作適正化機関の設立を準備しており、各種ハラスメントの防止を含む制作現場スタッフの労働環境の改善についてのガイドラインを検討、策定中です。ガイドラインの運用開始後は、その内容を順守した映画制作を実施する所存です。
(2)映画監督や、原作者の作家などからも声明が発表されていることへの見解
映画づくりの根幹を成す映画監督、そして原作者の方々がこのような声明を発表されたことに大きな意味、そして影響力があると捉えております。弊社としても重く受け止めており、賛意を表するとともに、この問題に対してより真摯に向き合っていきたいと考えております。
(3)ハラスメントや性加害を防止するために、現在の取り組み及び検討段階にある取り組み
・現時点で、実施済みの取り組み
ハラスメントに関する講習の実施(映画制作プロセス以外でのハラスメントも含む)▽松竹㈱、㈱松竹撮影所含む松竹グループ全従業員を対象としたハラスメントに関する講習、▽映像製作部門を含む各部門のプロデューサー職ならびに準する従業員向けに特化した、ハラスメントに関する講習(※フリーランスのスタッフへの講習は、現時点では行っておりません。)
・実施されていないものの、準備段階にある取り組み
弊社では、本年5月下旬より撮影予定の作品を、映像制作適正化事業の実証実験の対象作品として提供し、その制作現場では実証事業用ガイドラインに沿った制作を実施する予定です。実証実験に伴い、制作プロダクションである㈱松竹撮影所では、フリーランススタッフとの発注書の取り交わし徹底や、相談窓口の設置にむけ、現在、設置方法の具体的な検討を進めています。
(4)映画業界に従事する人がハラスメントや暴力の被害に遭うことなく安心して働くことができるために、映画製作配給会社としてどのような取り組みができると考えるか
上記の回答内容と重複いたしますが、現時点では今後、以下のような取り組みができると考えています。
・(適正化機関による)ガイドラインの策定と、制作現場におけるガイドラインの遵守
・映画制作現場におけるハラスメント相談窓口の設置
・松竹㈱、㈱松竹撮影所も含む、松竹グループの従業員を対象としたハラスメント講習の継続
また、松竹グループ従業員以外の現場スタッフへのハラスメント講習の実施も検討しております。
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ハフポスト日本版では、4社の回答をもとに、映画業界の労働環境の改善などを目的とし、経産省と連携して進める「映画制作現場の適正化」について解説。
さらに、映画界のジェンダーギャップや労働環境の改善に取り組む一般社団法人「Japanese Film Project」にも取材を行った。同団体が実施する、映画制作の実態を把握するためのアンケートの回答をもとに、映画業界における性暴力やハラスメントを根絶するために業界に求められることについて考えた。