坂本さんは「私の楽曲に対する彼の大きな敬意が見られました」などと綴り、今回の件を非難することなく、むしろ感謝の意を述べていた。
全文は、世界で活躍する音楽家としての寛大さと自身の芸術への考えが伝わってくるものだった。
類似していたのは、坂本龍一さんのどの曲?
指摘されていた疑惑は、ユさんによるプロジェクト『ユ・ヒヨルの生活音楽』のトラック2『とても私的な夜』の楽曲が、坂本さんの『Aqua』を盗作したのではないかというものだった。
今回の件で注目された『Aqua』は、1998年に発売されたオリジナルアルバム『BTTB』などに収録されている。
歌手で作曲家のユさんは、1992年に第4回ユ・ジェハ歌謡コンクール大賞を受賞し歌手デビュー。94年にはユン・ジョンオさんと「TOY」というプロジェクトユニットを結成した。96年からはユさんのみのプロジェクトとなり、様々なゲストボーカルを起用するなどして次々とヒット曲を生み出した。
現在はラジオやテレビ番組で進行を務め、MCとしても活動している。中でも『ユ・ヒヨルのスケッチブック』はParaviでも配信されるなど人気だ。
朝鮮日報(日本語版)などの報道によると、「検討した結果、曲のメインテーマが類似していることを認めます」と事実を認めた上で、「(坂本さんは自分が)長い間、最も影響を受け、尊敬していたミュージシャンなので、無意識に覚えていたメロディーで曲を書くことになりました。発表当時は、自分の純粋な創作物だと考えていたが、2曲の類似性は認めざるを得ませんでした」などと説明して謝罪していた。
心の広さが垣間見えるコメントに感動する
坂本さんは20日、「Ryuichi Sakamoto Social Project, Korea」の公式サイトを通じて、以下のようにコメントを発表した。
私に(この出来事に関する)情報を提供してくださったファンの皆さんと、この件を公に明かそうとしたユ・ヒヨルさんの率直な意図に感謝致します。
2曲の類似性はありますが、私の作品である『Aqua』を保護するための法的措置が必要なレベルであるとは考えられません。そして、私の楽曲に対する彼の大きな敬意が見られました。
私には、私が愛し、尊敬し、多くの事を学んだバッハやドビュッシーからも明らかに強い影響を受けている曲がいくつかあります。しかし私がバッハやドビュッシーのようなレベルで自分を見ているわけではないので、誤解はしないでください。
全ての創作物は既存の芸術の影響を受けています。(責任の範囲内で)そこに自身の独創性を5%~10%ほど加味するとしたら、それは素晴らしく立派で、感謝すべきことです。それが私の長年の考えです。
私はいまだに、自分が創りだす全ての音楽において、独創性の比率を上げるために最善を尽くしていますが、チャレンジングなことです。しかし、それもまた、芸術を美しくすることに繋がるのではと考えています。
ユ・ヒヨルさんと私のファンの皆さんの寛大な声援に感謝いたします。 ユ・ヒヨルさんのニューアルバムの幸運を祈り、彼の成功を祈っています。
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芸術の創作において盗作はもちろんあってはならないことだが、坂本さんはコメントでユさんの件を非難することなく、むしろ感謝の言葉まで伝えていた。
今回の盗作に対し、いかなる法的措置を取ることもしないとしていた。