天安門事件の前日に「戦車」を模したアイスを披露。中国・トップインフルエンサーのライブ配信が強制終了

中国SNSに3000万人以上のフォロワーを擁するインフルエンサーで、ライブコマースの代表的な存在として知られる。「口紅王子」の愛称も

インターネット上でライブ配信をしながら、商品の販売促進を行う「ライブコマース」の代表的な存在と言える中国のインフルエンサーが、ライブの強制終了という憂き目にあった。

理由は定かではないが、天安門事件から33年となる6月4日の前日に、戦車を模したアイスクリームを放送で披露したことが背景にあるとみられている。

インフルエンサーの李佳キさん(キは王へんに「奇」) (Photo by VCG/VCG via Getty Images)
インフルエンサーの李佳キさん(キは王へんに「奇」) (Photo by VCG/VCG via Getty Images)
VCG via Getty Images

■設備の故障と発表されたが...

ライブ配信が終了させられたのは、インフルエンサーの李佳キさん(キは王へんに「奇」)。中国SNS・ウェイボーでは3000万人以上のフォロワーを擁し、ライブコマースの代表的な存在として知られる。美容関連商品への造詣が深いことから「口紅王子」の愛称でも知られる。

李さんのライブ配信が実施されたのは6月3日。食べ物をテーマにした放送で、6月18日まで実施される通販プラットフォームのセールに合わせたものだった。

しかし、ライブは途中で強制的に終了となる。李さんはSNSで「機器の故障です。少々お待ちください」とアナウンスしたものの、およそ2時間後に「設備故障でライブを継続することができません。今日紹介できなかった商品は、今後のライブで取り上げたいと思います」と投稿した。

トラブルの原因は故障によるものではないかもしれない。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、李さんはアイスクリームを紹介していた際に、このアイスを戦車の形に変えて見せたという。

戦車が政治的にNGなのは明らかだ。ライブが実施されたのは天安門事件から33年となる6月4日の前日。戦車は、民主化を求めて天安門広場に集まった学生や市民たちを武力で鎮圧し、多数の死者を出した人民解放軍とつながる。また、武器を持たずに戦車隊の前に立ちはだかり、非暴力の象徴として語り継がれる「タンクマン」も想起させる。

「タンクマン」1989年 北京 (AP Photo/Jeff Widener, File)
「タンクマン」1989年 北京 (AP Photo/Jeff Widener, File)
via Associated Press

中国のSNSには「早く戻ってきて」と心配する声のほか、「今日はたった一つのアイスケーキ。明日は一体何がアウトになるのか」などと抗議するコメントも寄せられている。

ライブコマースをめぐっては、李さんと並んで有名だった女性の薇婭(viya/本名:黄薇)さんが2021年12月、脱税の疑いで罰金など合わせて13億4100元(約238億円)を科されている。

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