職場で継続的に「SOGIハラスメント」などを受けたとして、トランスジェンダー女性の従業員から提訴されたピクシブ株式会社が5月30日、公式サイトで声明を発表し、報道されていた従業員によるハラスメント行為について、事実だと認めた。
「ハラスメント行為については、性別・性自認・性的指向等に関わらず、万人に対して許されない行為であると認識しております」とした上で、ハラスメント防止に関する方針について検討し、コーポレートサイトにて公表する方針を示した。
◆どんな訴訟なのか?
ピクシブは、イラストコミュニケーションサービス「pixiv」を運営している。
同社に勤めるトランスジェンダー女性の社員が5月27日、職場で継続的にSOGIハラスメントやセクシュアルハラスメントを受けたなどとして、同社と元上司の男性に計約555万円の損害賠償などを求め、東京地方裁判所に提訴した。
訴状によると、原告女性は2018年の入社直後から、元上司の男性にわいせつな言葉をかけられたり、隠部に顔を押し当てられたりするなどのハラスメントを受けたという。
原告は、社内のセクハラ窓口の担当弁護士に相談。会社側からは、元上司の男性について、原告と同じ部署にしないことや社内の飲み会に参加させないといった措置を約束されたが、反故にされ精神的苦痛を強いられたとし、「職場環境配慮義務を違反している」と主張している。
◆「SOGIハラスメント」とは?
「SOGI」とは、恋愛や性愛の対象を表す「Sexual Orientation」(性的指向)と、自身の性をどのように認識しているかという「Gender Identity」(性自認)を表し、これに関する嫌がらせは「SOGIハラスメント」と呼ばれる。
2020年6月(中小企業では2022年4月から)、改正パワハラ防止法が施行され、差別的な言動をしたり、不利益な待遇を強いたりすることや、労働者のセクシュアリティを本人の了解を得ずに暴露するアウティングはハラスメントにあたり、企業にはそれらを防止することが義務付けられた。
◆ピクシブの見解は?
ピクシブは声明文で、「この度、弊社におけるハラスメントに関する提訴が行われるとの報道がございました。皆様にはご心配とご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません」と謝罪。
「一連の報道にありました、弊社従業員によるハラスメント行為があったこと、およびハラスメントを行った当該従業員を懲戒処分したことについては事実となります。被害者による申告を受け、2019年に該当する加害者に対して、降格・減給の処分とともに、被害者への接近禁止等を命じております」とつづった。
また、ハラスメント防止対策について問い合わせが多くあったといい、「外部の専門家を招いた全社員参加必須のハラスメントに関する研修の実施、管理職に対しての別途追加での研修の実施、外部専門家を交えたハラスメント相談窓口の整備などを定期的に行っております。今後もより一層の改善に努めてまいります」とした。
<声明全文はこちら>
この度、弊社におけるハラスメントに関する提訴が行われるとの報道がございました。皆様にはご心配とご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。
ハラスメント行為については、性別・性自認・性的指向等に関わらず、万人に対して許されない行為であると認識しております。このような事態を引き起こしてしまったことを会社として極めて重く受け止めております。
一連の報道にありました、弊社従業員によるハラスメント行為があったこと、およびハラスメントを行った当該従業員を懲戒処分したことについては事実となります。
被害者による申告を受け、2019年に該当する加害者に対して、降格・減給の処分とともに、被害者への接近禁止等を命じております。
また、多数お問い合わせをいただいている弊社のハラスメント防止対策については、外部の専門家を招いた全社員参加必須のハラスメントに関する研修の実施、管理職に対しての別途追加での研修の実施、外部専門家を交えたハラスメント相談窓口の整備などを定期的に行っております。今後もより一層の改善に努めてまいります。
現在、弊社のもとに訴状は届いておりませんが、届き次第、訴状記載の事実関係を確認し、真摯に対応してまいります。
なお、今後係争に入る可能性のある案件のため、本件については皆様への詳細なご説明がかないませんことをご理解くださいますようお願い申し上げます。
重ねてになりますが、弊社はハラスメント行為を許されないものと認識しております。
改めてハラスメント防止に関する方針について検討を行い、コーポレートサイトにて発表させていただきます。