好奇心。トム・クルーズが記憶に残る映画を作るために行っている並々ならぬ努力を説明する言葉があるとすれば、それは「好奇心」だろう。
紛れもないスーパースターで、俳優兼プロデューサーでもあるクルーズが、最新作『トップガン マーヴェリック』(5月27日より日本公開中)のプロモーションのために東京を訪れ、自身の好奇心の源について語った。
「観客にとって特別な作品にするため」
クルーズは、5月23日に東京ミッドタウンでの記者会見、翌24日に横浜の大さん橋で行われたレッドカーペット・プレミアに、この映画の共同プロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーと共に出席した。
クルーズは、前作『トップガン』(1986)から続編の制作に同意するまで、約35年もの月日がかかった理由について、観客が、自身が演じた海軍の戦闘機パイロット、ピート・“マーヴェリック”・ミッチェルの物語にのめりこめるよう、作品を磨き上げることにこだわったからだと説明した。
「何十年も前から続編制作の要望はあったが、私はまだ準備ができていませんでした。(前作を作り、ヒットした直後の)80年代には、続編の準備が整っていなかった」
「続編を作るにはどうすればいいか、何十年も考え続けてきた。私自身、飛行機やジェット機を操縦し、アクロバット飛行もします。それで、どこへ行っても『トップガン』を撮りたいと言う人がいて、もし自分がやるなら、どうやってアプローチしようかとずっと考えていた。観客にとって特別な作品にするために、試行錯誤を繰り返していたんです」
クルーズは、俳優としてのキャリアをスタートさせた当初から、単に映画に出演するだけでなく、それ以上のことをやりたかったと話す。『トップガン マーヴェリック』を、前作以上に面白い作品にするために好奇心を頼りに知識を深めていった。それには、他の作品の経験もいきたという。
「映画を撮るために必要な技術がどのように変化し、発展していくのかを見ていた。(クルーズ主演の)『バリー・シール/アメリカをはめた男』や『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』を観れば分かってもられるかもしれないが、ヘリコプターの空撮シーンでも、複数の場所にカメラを設置するなど、様々な挑戦をしました」
クルーズが映画人の中でも際立っているのは…
中でも『トップガン マーヴェリック』で重要だったのは、観客に戦闘機のコックピットに乗り込んでいるように体感させ、飛行シーンの臨場感を味わせることだった。
プロデューサーのブラッカイマーは、「世界一のスター」であるクルーズが、映画人の中で特に際立っているのは、その追求心だと話す。
「熱心な飛行士であるトムは、俳優たちがF-18(シリーズを通して映画に登場する、アメリカ海軍の戦闘機)に搭乗できるようにするために、3カ月間の訓練プログラムを考案しました。
まず、小型のプロペラ機に乗せる。次にアクロバットでの飛行訓練。そしてジェット機、といったように。これは、G(重力)に耐性をつけるために必要なんです。1Gが自分の体重分に相応するのですが、F-18に乗るには7〜8Gに耐えなければいけません」
ブラッカイマーは、冗談を交えて「クルーズの努力の結晶」だという、前作での撮影秘話についても明かした。
「1作目の撮影で、俳優たちはF-14に乗りましたが、残念ながら使えるのはトムの映像だけでした。他の役者は、みな気絶するか吐くかだったからです」
クルーズは、撮影のために実際に海軍に足を運んだという。
「私はただ映画の勉強をして、あらゆる可能性を見出し、テクノロジーの研究もしました。 そして、その知識をもとに撮影していった。グリーンスクリーン(CG合成撮影)を使うつもりはありませんでした。ジェリーはそれにも非常に理解を示してくれた。海軍に行って、実際の戦闘機に乗って飛行シーンを撮影するために、色々と話もしました」
横浜で行われたプレミア上映でのファンの反応と、彼のキャリアで最高の評価を得ている映画レビューをみるに、『トップガン マーヴェリック』は興行的に大成功を収めるだろう。
「ただ映画を作るだけではない。常に限界に挑戦したいと思っています。私は観客を楽しませるために、限界に挑戦するんです」と語ったクルーズは、こうも続けた。
「すべての映画は挑戦的であり、この映画も間違いなくそうでした。『トップガン』の続編を36年後に作るなんて...準備が整うまで時間を要しました。この作品を特別なものにしたかったのです」
「非常にエモーショナルな物語ができました。必要な要素がすべてが正しくそろったからこそ、作ることができた映画です」
(取材・文=ダニエル L. スミス/バックステージパス プロデューサー、翻訳・編集=ハフポスト日本版)
▼作品情報
2022年5月27日(金)公開
(c)2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
配給:東和ピクチャーズ