アメリカ・フロリダ州の高校で、ある男子生徒が卒業式で述べたスピーチに多くの称賛の声が寄せられている。
その男子生徒は、ゲイを公表しているザンダー・モリッツさん。フロリダ州で成立した通称「ゲイと言ってはいけない法」を巡り州を訴えている原告の一人だ。
5月10日に自身のTwitterで「数日前、校長が私をオフィスに呼び、卒業式のスピーチで私の活動や訴訟の原告としての役割に言及した場合、学校管理者は私のマイクを切り、スピーチを終了し、式典を中止させる合図があると告げた」と明らかにし、「私は沈黙させられているし、助けが必要だ」と訴えていた。
「ゲイ」と言わずにどうスピーチした?
注目が集まった卒業式当日。モリッツさんはスピーチの中盤でこう切り出した。
「皆さんご存じのように、私は…カーリーヘアです」
笑いと拍手が会場を包む。モリッツさんは「昔は自分のカールが嫌いだった。朝から晩まで恥ずかしくて、自分の一部であるこの髪を必死で直そうとしていた。しかし、自分を直そうとする日々のダメージがあまりにも大きくなってしまった」と続けた。
そう、モリッツさんは「ゲイ」を「カーリーヘア」に例えて、アイデンティティーの問題を巧みに訴えたのだ。
「フロリダでカーリーヘアを維持するのは湿気のため大変だが、私は自分を誇りに思うことにし、本来の自分の姿で学校に通い始めた。カーリーヘアの子どもたちにはコミュニティーが必要だが、彼らにそんな場所はない」とモリッツさん。
「その代わり、彼らは湿気の多いフロリダの気候の中で生きていけるように自分自身を修正しようとするだろう」と訴えた。
なぜ「ゲイ」という言葉を使えなかった?
CNNによると、卒業の数週間前、高校の校長がモリッツさんに「ゲイと言ってはいけない法案に抗議したこと」について話すことはできないと告げたという。
モリッツさんは「彼はいつも私のことを応援してくれていたし、私のアイデンティティーのことも理解してくれていたので、本当に傷ついた」と語った。
また、モリッツさんは1年生の時にカミングアウトし、同校初のオープンリー・ゲイの学級委員長になったことがあるため、この論争に対処する責任を感じていたという。
「ゲイと言ってはいけない法」とは?
フロリダ州では3月、デサンティス知事(共和党)が性的指向や性自認に関する話題を小学校の授業で取り上げることを規制する法案に署名し、法律が成立した。
反対派が「ゲイと言ってはいけない法」と呼ぶこの州法は、LGBTQの議論を封じて差別を助長するとして、人権団体や企業などから批判の声が上がっている。
ホワイトハウスも2月に「フロリダ州の保守的な政治家たちがLGBTQなどの子どもたちを攻撃するための法案を進めた」と非難していた。
モリッツさんはこの法律に抗議し、生徒たちのストライキを先導したという。
モリッツさんは卒業式のスピーチ終盤で「自分の権利を無駄にすることは、それを最も持っている人に与えてしまうということだ。そして今、最も権力を持っている人たちが、最も持っていない人たちに向かってきている。私たちはこのような事態に直面すべきではない」と訴えた。
SNS上では、モリッツさんに対し「力強くて雄弁なスピーチだ」「私の新しいヒーローだ」といった多くの称賛の声が寄せられている。
卒業式のスピーチを見事に成し遂げたモリッツさん。CNNによると、ハーバード大に進学する予定という。