ゲイであることを公表して活動しているK-POP歌手のHolland(ホランド)さんが、韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で、セクシュアリティを理由に暴行被害を受けたことをSNSで報告した。その後、アメリカの音楽メディア「ビルボード」のインタビューで詳細を語り、ネット上の同性愛嫌悪のコメントを批判し、「この話を共有することは、勇気はもちろん痛みを伴うことだと知ってほしい」などと呼びかけている。
「LGBT+の人権を取り巻く悲しい現実を示してる」
Hollandさんは、2018年に楽曲「Neverland」でデビュー。ミュージックビデオには同性によるキスシーンが取り入れられ、自身がゲイであることを公表した。「K-POP界で初めてゲイであることを公表したアイドル」とされ、活動を通じ性的マイノリティの権利を訴えてきた。
Hollandさんは5月6日に、SNSに2枚の写真を投稿した。その内容によると、マネージャーと友人の3人でイテウォンを歩いていた時に、突然見知らぬ男が近づいてきたという。その男はHollandさんを「汚いゲイ」と呼び、顔を2回叩いたと明かした。写真では、Hollandさんの鼻の周りに2つの傷が確認できる。
Hollandさんは「これは明らかにヘイトクライムです」と抗議し、こう続けた。
「セクシュアリティがゲイであるとオープンにしている事実によって、このような暴行の被害に遭うことは決してあってはならないことです。他のすべてのLGBT+の人たち、高齢者、女性、マイノリティにおいても同様です。2022年に起こったこの出来事は、LGBT+の人権を取り巻く悲しい現実を示しています」
警察にも通報したといい、「どんな人であろうと、この世界で誰に対してもこんなことは起きるべきではない。憎悪や暴力より、愛と希望でこの世界が満たされてることを願っています」ともつづった。
攻撃の恐れなく暮らす人にも知ってほしい
5月11日にアメリカの音楽メディア「ビルボード」に掲載されたインタビューで、Hollandさんは韓国における性的マイノリティの人々が置かれている状況とあわせて、この暴行被害について詳細を明かしている。
韓国社会では、性的マイノリティに対する差別や偏見が根強く残っており、マイノリティの人々の権利を守るための法律や制度は不十分な状況にある。同性婚は法的に認められていない。
Hollandさんは同メディアのインタビューで、自身が被害にあった理由について、「その日の服装が華やかだったからだと思う。そして、私が公然と顔を知られている、オープンリーゲイのKPOPアーティストであるから」と答えた。
韓国では「差別禁止法」が成立していないために、「同性愛者として適切に保護されているとは感じない」とし、今回のような被害を受け警察に電話をしても「暴行事件」と扱われ、ヘイトクライムとは扱われないと、自身の考えを述べた。
また、この暴行被害が韓国のメディアで報道されると、一部では同性愛嫌悪のコメントがみられたという。Hollandさんは「LGBTQの子どもたちが傷つかないよう、悪口を言うのは私だけにしてください」とし、自身も「ツイートについた、悪意のある卑劣なコメントを見て、心が崩壊しそうになった」と、ネット上の中傷についても問題提起した。
Hollandさんは「この話を共有することは、勇気はもちろん痛みを伴うことだと知ってほしい」と呼びかけ、こう続けた。
「孤独を感じる人には慰めになってほしい。それだけではなく、攻撃の対象になる恐れを感じることなく当たり前に暮らしている人々にも、こういった犯罪は現に存在するのだと衝撃を受けてほしい」
Hollandさんは自分と同じような若い同性愛者には「どうか落ち込まないでください。これから良くなっていくに違いないから」とメッセージを贈り「Hollandのことで心配してほしくはありません。それよりも、人に希望と力を与えられる存在でありたいと思います」と語った。
Hollandさん、どんなアーティスト?
Hollandというアーティスト名は、世界で初めて同性婚が実現した国であるオランダからとった。「I’m So Afraid」や「I’m Not Afraid」などの楽曲では、自身のカミングアウトについての複雑な感情を歌っている。
2020年のVOGUEのインタビューでは、「学生時代に辛いことがあった時には、欧米のLGBTQ+のアーティストに力をもらっていた。韓国にも同じような存在が必要だと思った」と語っており、韓国を中心にファンから熱い支持を受けているアーティストだ。