東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは4月27日、東京ディズニーランドのトゥモローランドにあるアトラクション「スペース・マウンテン」とその周辺を一新すると発表した。
同施設のリニューアルは1983年の開園以来、初となる。SNSでは驚きの声があがり、Twitterでは「スペース・マウンテン」が日本のトレンドになった。
続々と新たな施設がオープンするなど、このところ変化が著しいディズニーの2つのテーマパーク。新たに公表された「2024中期経営計画」の中に、今後目指す形が示されていた。
そこに、東京ディズニーリゾートの未来と課題が見える。
「スペース・マウンテン」のリニューアルはどんな意味を持つのか
オリエンタルランドの発表によると、現在のスペース・マウンテンは2024年で運営を終了し、全く新しいそれが建設される。新たなスペース・マウンテンは2027年にオープンする予定だ。
ビッグサンダーマウンテン、スプラッシュマウンテンとともに、“三大マウンテン”として長年東京ディズニーランドの顔とも言うべき存在となってきた同アトラクションの今後は、無くなるのではなく、“建て直し”というかたちとなった。
SNSではリニューアルへの期待の声は多いものの、スペース・マウンテンは1983年の開園当初からあったアトラクションだけに、現在の姿でなくなることを惜しむ声も早速寄せられた。
パーク内のアトラクションを含む施設は時代とともに刷新されてきたが、その中でも変化の多いエリアの1つがトゥモローランドだ。
オープン当初に存在したのは、「スペース・マウンテン」、「グランドサーキット・レースウェイ」、「スタージェット」、「エターナル・シー」、「マジックカーペット世界一周」、「(ファンタジーランド行き)スカイウェイ」(※ファンタジーランド側からはトゥモローランド行き)、「ミート・ザ・ワールド」「スターケード」の8つだった。
スペース・マウンテンはアトラクション自体が無くなることはないが、今後は全く新しい姿になるため、開園当初から続く景色は見られなくなる。
東京ディズニーランドは2023年で40周年を迎える。
「ディズニーランドは永遠に完成しない。世界に想像力がある限り、成長し続けるだろう」というウォルト・ディズニーの言葉通り、今後も進化するが、懐かしい風景が変わっていくこともまた確かだ。
例えば、同エリアに開園当初からロープウェイのアトラクションが存在したことも知らない世代がいる。
「2024中期経営計画」から分かる今後の戦略
パークの進化は今後も続く。2023年度にはリゾート内の東京ディズニーシーに新テーマポート「ファンタジースプリングス」がオープン予定となっている。
東京ディズニーシーの8番目のテーマポートとなる同エリアは、ディズニー映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』がテーマとなる。
27日に新たに公表された「2024中期経営計画」の中に、東京ディズニーリゾートが今後目指す形が示されている。
そのうち、パーク事業戦略では「パーク体験の質の向上」が掲げられた。
1日当たりの入園者数の上限を新型コロナウイルスの流行前より引き下げ、「いつ訪れても快適なパーク環境」を目指すという。
運営側は「平日や休日、時期などの繁閑差を年間通じて最小限にすることで平準化を推進する」としている。確かに、大型連休や特定の時季、さらに土日祝日と平日では、アトラクションの待ち時間などに大きく差がある現状もある。平準化は大きな課題の一つだ。
また、投資戦略についても記載がある。
2020年には、東京ディズニーランドのファンタジーランドのエリア内に映画『美女と野獣』をテーマにした施設がオープンしたことも、記憶に新しい。
計画によると、2022年度から2026年度まで、着工中の東京ディズニーシー「ファンタジースプリングス」の開業や既存アトラクションの魅力向上につながる開発を行うという。今後も新しい体験を期待させる説明となっている。
ちなみに、2027年にオープンする予定の新たなスペース・マウンテンとその周辺環境には約560億円が投資される予定だという。
“働く場所”としてのTDR、変わるべきこと
オリエンタルランドは「2030年に目指す姿」についても指針を公表した。
その中で目を引くのが、「従業員の幸福」という項目だ。
「これからも働きたい場所として選ばれ続けるために、働くことによって得られる喜びや達成感(仕事のやりがい)の創出と、働きやすい社内環境や制度の整備・向上を目指す取り組みを行います」と言及がある。
同社は2つのパークで働くアルバイトの基本時給を2022年4月から一律で100円引き上げた。基本的な業務範囲の拡大に伴い、基本となる時給が1100円から1450円と改定された。
だが、給与面での改善だけでは不十分だ。ハラスメントへの適切な対応も求められる。
エンターテイメントプログラムに出演していた契約社員の40代の女性が、上司からのパワハラが原因で心身に苦痛を受けたとして、オリエンタルランドに対し330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2022年3月29日に千葉地裁であり、裁判長は会社側に88万円の支払いを命じたと報じられた。
女性は「従業員にとっても『夢と魔法の王国』と自信を持って言えるような環境になってほしい」と切実に訴えたという。
多くのリピーターで支えられてきた東京ディズニーリゾートの進化は今後も続く。施設のリニューアルはもちろんだが、そこで働く人へのリスペクトも大切にしながら、“新たな姿”を見せてほしい。