日本最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)2022』(4月22〜24日、代々木公園)の3日目となった24日、3年ぶりに代々木オフラインのプライドパレードが行われた。
この日はあいにくの雨となったが、LGBTQ当事者やアライが多様な性を象徴する6色のレインボーグッズや「日本でも、結婚したい」「LGBTQは身近にいます」といったプラカードを持って、渋谷の街を練り歩いた。
今年は新型コロナウイルス感染防止の観点から、事前の抽選に当選した人のみの参加となったが、沿道には当事者や支援者がずらりと並び、「ハッピープライド」などと声をかけ楽しんだ。
ハフポスト日本版は、パレードに参加した人の思いを聞いた。
◆地方の当事者の「故郷を帰れる街にしたい」思い
長年、性的マイノリティのためのコミュニティづくりを続けてきた沢部ひとみさんは、「故郷を帰れる街にしたい」とのプラカードを掲げ、仲間たちとパレードを歩いた。
このメッセージは元々、青森でパートナーシップ制度導入やパレード立ち上げなどの活動に携わり、2021年に亡くなった青森出身の宇佐美翔子さんが訴えていたものだ。沢部さんらによると、宇佐美さんは20代の時に、同性愛者であることを母親から「2度と帰ってくるな」と言われて、故郷青森をあとにしたという。お母さんが亡くなった後にパートナーと帰郷し、LGBTQ支援に積極的に取り組んだ。パートナーとの結婚を望んで結婚の平等を求める活動もしていたものの、願いが叶わぬまま2021年に亡くなった。
沢部さんは宇佐美さんの思いを引き継ごうと思い、このプラカードを歩くことにしたと話した。「LGBTという言葉が使われるようになり、同性婚に好意的だと回答する人たちが増えている一方で、今でも悲しい経験をしている人たちがいます。そういう現実を知っておくことが必要と思って『故郷を帰れる街にしたい』とのプラカードを書いてきました。届いてほしい」と話した。
◆沿道からの声に、「こんなに賛成してくれる人がいる」
10代、20代を中心とした「YOUTH PRIDE JAPAN」のグループでパレードを歩いた、大学1年生のあやねさんとあゆなさん。
性的マイノリティ当事者であるあゆなさんは、「東京レインボープライドだから、自分にプライドを持てるといいなと思って、参加しました」と話す。
初参加のパレードは、沿道の企業が建物にレインボーの旗を掲げていたり、そこで働く従業員が手を振ってくれたりしたことに、勇気づけられたという。また、歩いている時に「自分はLGBTの当事者だ」という気持ちも強く感じた。
「仲間に囲まれたり、道の脇にいた賛同者の方に会ったりすることで、こんなにも賛成してくれている人たちがいるんだ、もっとこの道を堂々と歩いていいんだと思うことができました」
あやねさんは、これまで札幌のパレードに参加したことはあるものの、東京は初めて。多くの人たちが集まるTRPの力を感じたという。
「東京は規模が大きくてより人の集まりを感じられましたし、歩いてみて周りのパワーもすごく感じました。コロナ禍ですけれど、集まれるというのはすごい大事なことだと思いました」
◆「問題に向き合い、若い世代の子たちが笑える未来を」
交際して8年目になるゲイカップルだという光貴さん(42)と嘉樹さん(44)は、この日、腕を組みながらパレードを歩いた。普段、ゲイの友人以外にはほとんどカミングアウトしていないという2人。「普段デートするときも、人目が気になってしまい、外で手を繋いだこともほとんどありません」と話す。だからこそ、多様な性の人が当たり前に自分らしくいられるTRPという空間が好きだといい、「3年ぶりの開催を心待ちにしていました」と笑う。
30年以上前にゲイだと自覚した光貴さんは、少しずつではあるが、LGBTQ当事者も生きやすくなってきたと感じ、「TRPみたいなイベントも、そういう空気を作ってくれるのかも」と話す。
一方今年は、TRPにブースを構える『アクサ損害保険』で同性パートナーを配偶者として認められなかった男性が、ブース前で同社やTRP実行委員会に抗議活動をする一幕もあった。嘉樹さんは「わがままかもしれないけれど、TRPにはもっと、若い世代の子たちが笑える未来を作ってほしい。何事もやっていれば問題は出てくる。それに丁寧に向き合ってほしい」と期待を寄せた。