「マスクで人の顔と名前が覚えられない...」と悩む新社会人。対処法を『話し方のプロ』に聞いた

コミュニケーションや会話の悩みは、コロナ以前と今とで変化しています。対処方法を、コミュニケーションの上達をサポートする企業「日本話し方センター」の代表に聞きました。
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学生生活を終えた新社会人たちが、4月から本格的に働いている。

大きな希望を抱きながらも、慣れない仕事に戸惑いや不安もあるだろう。新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、「マスク必須」の生活が続いている。このご時世で、新たに人間関係を構築する難しさを感じている人たちも少なくない。

新卒で都内のIT企業に採用された23歳の男性は、ある悩みを口にする。 

「社内や取引先の方たちの顔と名前が覚えられていなくて困っています。マスクをつけているので相手の顔が記憶に残らない。名前を聞き直すのも失礼ですし…。あとはマスクをしていると緊張した時にうまく話せない時があります。何度も聞き直されると、『不快な思いをさせているんではないか』と不安になりますね」

コロナ禍でコミュニケーションのあり方が変わった。感染防止のため、アクリル板やマスクをして打ち合わせすることが日常の風景に。リモートワークを導入する企業が増え、社内の会議もパソコンのオンラインで行う機会が急増した。

前述の男性は就職活動の際、半分の企業がリモートでの面接だったという。「正直やりにくかったです。対面の面接だとこちらが話していることに対する『空気感』をつかめるのですが、パソコン上のリモート面接だと、こちらが一方的に話している感覚で、面接している方がどう感じているかわからない」と振り返る。

会話の悩み、コロナ前「緊張する」→今「伝わらない」

リモート会議やマスクのイメージ画像
リモート会議やマスクのイメージ画像
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コミュニケーションの上達をサポートする企業「日本話し方センター」(本社・東京都千代田区)は1953年創業で、日本で最初に立ち上げた話し方教室として、のべ30万人以上が受講した実績を持つ。 

同センターの横田章剛代表(61)は、コロナ禍で受講生の悩みに「ある変化」が見られることを明かした。

「(以前は)『人前で緊張して上手く伝えられない』という相談が多かったのですが、最近は『言いたいことが相手にうまく伝わらない』という悩みが増えています。リモートでやり取りする機会が増えたことに加え、対面でもマスクを着用して話すのでコミュニケーションの際に難しさがあると思います」

マスクがコミュニケーションに与える影響は、文化庁が実施した2020年度の「国語に関する世論調査」(全国の16歳以上の個人6000人が対象、有効回答数は3794人)の結果からもみてとれる。

マスクをつけると話し方や態度が変わることがあると思うかという質問に対して、62.4%が「変わることがあると思う」と回答している。

マスクを着用して話すと、どうしても声がこもってしまう。相手の声も聞き取りにくいため、何度も聞き直す経験をした人も少なくないだろう。

横田代表は言う。 

「少し声を大きめに張ってお話しすることをお勧めします。普段の1.5倍ぐらいの感覚ですね。無理に声を張る必要はないです。1.5倍ぐらいの声量で、マスクをしていない時と同じぐらいの聞き取りやすさになるでしょう。2点目は声のキーを少し上げることです。低い声は相手に信頼感を与えやすいのですが、こもりやすく奥に届かないのでマスクをして話す際は聞こえづらい。少しキーを高くするだけで聞き取りやすくなるし、明るい印象になります。ドの音程をファかソぐらいに上げるといいですね」

顔が覚えられない... 優先順位と特徴メモ

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マスクを着用した相手と会話した際、顔の印象が残りにくく名前も記憶しづらい。この悩みにはどう対処すれば良いだろうか。

横田代表は「口元を隠されると相手が何歳ぐらいかも分かりづらくなります。鼻筋や口元、顔の輪郭はかなり重要なパーツなので、マスクを着用している人の顔が覚えられなくても致し方ありません。過度に自分を追い込む必要はないと思います」と前置きした上で、次のように勧める。 

「すべての人の顔を覚えようとするのではなく、対話する機会が多い社内の人や、取引先の人達の名前を優先的に覚えるのが良いでしょう。顔だけでなく、普段の姿勢や仕草を見ることも、名前を覚える上で大きな手助けになります。記憶力は個々によって違うので、人の名前を覚えるのが苦手な人は相手の特徴をメモするのも有効だと思います。その上で、できれば会話の中で相手の名前を出して話すことをお勧めします。その方との距離感が確実に縮まります」

横田代表はコミュニケーションを取る上で、「挨拶」と「返事」の重要性を強調する。

「人間関係の扉を開くのが挨拶です。相手に良い印象を持ってもらうためにはじめの印象はとても大事です。少し高い声で元気よく挨拶すれば、嫌な気持ちになる人はいません。とっつきにくくて挨拶しにくい人や挨拶を返さない人もいるかもしれませんが気にしなくていいです。こちらは挨拶を続けましょう。しばらくすれば相手からも挨拶が返ってくると思います。返事も挨拶と同じように相手からの信頼を得られます。『はい!』という元気の良い返事をしっかりするよう心がけておけば、やがて無意識にできるようになり習慣化します」

マスク越しやリモート環境でも、良好な人間関係を築くためには、これまでの方法に加えて、ちょっとした工夫も求められる。コロナ禍で円滑なコミュニケーション方法を身につければ、大きな自信につながるかもしれない。

(取材・文:平尾類、編集:濵田理央

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