人はなぜ緊張するの? 新生活で役立つ、緊張をほぐす5つの鉄則

緊張をほぐすにはどうすればいいのかなどについて、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に伺いました。
ウェザーニュース

春の訪れとともに新年度が始まり、4月から新しい職場や学校での生活を迎えたという人も多いと思います。

スマホアプリ「ウェザーニュース」のユーザーを対象に、あなたは緊張しやすいタイプですか?のアンケート調査を実施したところ、約8割の方が緊張するタイプという回答でした(2022年4月15日実施、1,327人回答)。

なぜ重要な場面で人は緊張してしまうのか。また、緊張をほぐすにはどうすればいいのかなどについて、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に伺いました。

緊張を引き起こす脳のメカニズムとは

新入社員でなくとも社会人なら、新年度を迎えるにあたってより重要な仕事を任されてプレゼンテーションの場に立ったり大勢の前でスピーチをしたり。最終学年の学生・生徒であれば就職活動も本格化して、面接などの機会も増えてきます。

緊張しやすい人にとっては“苦痛”ともいえる時季ですが、どうして人前で話すときなどに緊張してしまうのでしょうか。

「人間が緊張するのは、脳のメカニズムの問題です。人間には『好かれたい』『認められたい』『よい評価を得たい』という3つの欲求があります。どれもプレゼンや面接の際、特に意識する点ですが、それが傷つけられたりうまくいかなかったりするかもしれないと感じた瞬間に、脳が『緊張』というかたちで警鐘を鳴らすのです。

緊張や不安を感じたとき、脳内物質のノルアドレナリン値が上昇して交感神経が刺激されます。このとき心拍数や体温、血圧が急に上昇するため、動悸や発汗、震えなどの症状が生じます。

緊張の度合いが特に激しい人は交感神経がより敏感なので、これらの反応・症状が強く出てしまう傾向があり、社交不安障害(あがり症)になることもあります。

緊張は“慣れれば大丈夫”などといわれますが、脳のメカニズムの問題なので、残念なことにどれほど場数を踏んでも克服されません」(吉田院長)

緊張をほぐす5つの鉄則

医療機関ではあがり症と診断されると、症状に応じて精神安定剤や抗うつ剤などを処方してくれると聞きますが、副作用も心配です。薬に頼らずに緊張をほぐす方法はあるのでしょうか。

「薬に頼らない『非薬物療法』として、次に挙げる5つの鉄則をおすすめします」(吉田院長)

(1)意識を別のところに持っていく
緊張しやすい人は『何をどう話すか』より、頭の中が『もうすぐ自分の番だ/話すのがいやだ/怖い』という感情でいっぱいになっています。それらは放っておいて、具体的には『どんなポーズをとるか/どの言葉や内容を強調するか/どんな質問がきそうか』などを考えてください。

(2)ポジティブシンキングをする
緊張することは当たり前で集中している証拠ととらえ、『こんなことができる自分は素晴らしい』と思ってください。

(3)自信を持つための裏付けをする
日頃から自分をほめながら練習や準備を怠らず、『やるべきことはやった』という気持ちを抱きましょう。根拠などなくても構いません。自分に自信を持ってください。

(4)イメージトレーニングを行う
たとえば、みんなが自分のプレゼンに聞き入って、話が終わると『素晴らしい!』と拍手を浴びる様子を想像してみてください。

(5)おまじないの言葉をつぶやく
『心は落ち着いている、何も心配はない、私は好きなことをしているのだから』とつぶやいてください。

大勢の前で話すときに緊張しないコツ

特に大勢の前で話すときには緊張してしまいがちです。緊張をほぐすコツのようなものはあるのでしょうか。

「緊張しがちな人であっても、目の前にいる相手とは普通に話ができていますよね。大勢の人の前でも、それを実践すればいいのです。

大勢の人の中で比較的前のほうにいる“人なつっこそう”なタイプを右手・中央・左手にそれぞれ1人ずつ、合わせて3人見つけてください。話すときにはその3人を順番に見ながら話をしましょう。

聴いている側は『みんなを見回しながら、ずいぶんゆとりがあるなあ』と感じてくれます。聴衆が500人でも1,000人でも、このことに気をつけていれば大丈夫です」(吉田院長)

話をするときに緊張を強いられる“見も知らなかった人”は、新たなよき出会いの相手でもあるはずです。春の明るい陽射しとさわやかな空気のもと、「5つの鉄則」を実践して緊張をほぐし、新生活を楽しく豊かなものにしていきましょう。

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