放送倫理・番組向上機構(BPO)青少年委員会は4月15日、「痛みを伴うことを笑いの対象とする」バラエティー番組について、「視聴する青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性がある」とする見解を公表した。放送局に、改善や配慮を求めている。
中高生からも「パワハラ的なことを楽しんでいるように見える」 と意見
発表によると、同委員会は2000年と2007年にも、バラエティー番組における暴力的なシーンに対し「青少年に対する影響を考慮しなければならない」などとして、改善を求める見解を発表している。
しかし、その後も「出演者の心身に加えられる暴力」を演出内容とするバラエティー番組に関して、同委員会に寄せられる「いじめを助長する」「不快に感じる」という趣旨の視聴者からの意見は減少しなかったという。中高生モニターからも、「本当に苦しそうな様子をスタジオで笑っていることが不快」「出演者たちが自分たちの身内でパワハラ的なことを楽しんでいるように見える」など、不快感を示す意見も一定数寄せられた。
同委員会では、2021年8月からこうした演出のあるバラエティー番組の審議を行ってきた。
ゲストが笑いながら視聴「いじめ場面の傍観を許容するモデルに」と懸念示す
15日に公表された見解では、暴力シーンの放映には十分な注意が必要であるとした上で、格闘技やドラマは、「(暴力を振るう個人と暴力を振るわれる個人の)両者の了解のもとに行われる一種の演技であることが視聴者にも明白である」が、近年のバラエティー番組の罰ゲームやドッキリ企画は、インパクトを求めて「リアリティー番組として見えるように工夫されている」と指摘。作り込みを精緻化させ、製作者、出演者間で了承されている場合でも、「小学生の場合は、作り込まれたドッキリ企画をリアリティー番組としてとらえる可能性は高い」との見解を示した。
近年、視聴者から批判が寄せられた番組の具体的な例として、次の2つが紹介されている。
▽刺激の強い薬品を付着させた下着を、若いお笑い芸人に着替えさせ、股間の刺激で痛がる様子を、他の出演者が笑う。
▽深い落とし穴に芸人を落とし、その後最長で6時間そのまま放置するドッキリ番組。脱出を試みるが失敗して穴の中に落ちる芸人を、他の出演者のうち何人かが嘲笑する。
同委員会は、こうした「他人の心身の痛みを嘲笑する」演出は、最新の脳科学的及び心理学的見地からも、「それを視聴する青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性がある」と指摘した。
また、2013年に「いじめ防止対策推進法」が成立し、いじめをめぐる社会的認識は大きく変化していることからも、こうした演出を青少年が模倣し、いじめに発展する危険性も考えられると言及。スタジオでゲストが笑いながら視聴する様子が、「いじめ場面の傍観を許容するモデルになることも懸念される」とした。
見解では、放送局に対し「時代を見る目、センスや経験、技術を常に見直し、改善し、駆使することが重要である」とし、テレビの公共性や青少年に与える影響を配慮した番組作りを求めている。