作家の山内マリコさんと柚木麻子さんが4月12日、「原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます。」と題した声明を発表した。
映画業界では、監督や俳優から性暴力の被害を受けたとする告発が相次いでいる。この声明では、作品の原作者を務めた経験のある作家が、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求め、連帯の意志を示した。
「声をあげてくださった方々の勇気に応えたく、連帯の意志を表明します」
文責は山内さんと柚木さんの2人。声明では、映像化が決まっても原作者が制作に関わることはほとんどないため、作品が「どのような環境で作られるか、私たちは知り得ない」と前置きしつつ、「原作者の名前は、映画の冒頭にクレジットされ、その作品がいかなるものであっても、自分の生み出した物語である責務を負います。映画制作の現場での性暴力・性加害が明るみに出たことは、原作者という立場で映画に関わる私たちにとっても、無関係ではありません」とした。
そのうえで、映画業界で問題視される性暴力やハラスメント等に対し、次のように訴えた。
「不均等なパワーバランスによる常態的なハラスメント、身体的な暴力、恫喝などの心理的な暴力等が、業界の体質であるように言われるなかで、今回、女性たちが多大なリスクを背負って性被害を告白したことは、業界の内外を問わず、重く受け止めるべきと考えます。声をあげてくださった方々の勇気に応えたく、私たちは、連帯の意志を表明します」
映画業界の内部にいる人たちが意思を表示しづらい状況にあることを、関係者を通じ、目の当たりにしたという山内さんと柚木さん。
作家・原作者という立場で声明を発表したきっかけについては、「外部にいて、なおかつ特殊な関係性を持つ原作者である私たちならば、連帯し、声をあげられるのではないかと考えた」と説明。「この声明が、閉じた世界で起こる性加害の抑止力になることを願います」と訴えた。
さらに、「出版界でのセクシュアルハラスメントを根絶するために、これまで我々が立ち上がってこなかったことへの自戒と反省でもあり、今後は変えていきたいという意志表明でもあります」と、出版界についてもコメント。「我々自身も、ハラスメントの加害者になりうるという意識を持たなくてはなりません。映画界が抱える問題は、出版界とも地続きです」と続けた。
「映画制作の場が、これほど性加害を生みやすいことが周知された今、環境そのものを大きく変えてゆく必要があるのではないでしょうか」と提言し、こうした問題を撲滅するため、原作者としても、行動を変えていく姿勢を示した。
「二度とこのような事態が起きないよう、私たちも、契約の段階から、適切な主張をしていきたいと思います。今後、万が一被害があった場合は、原作者としてしかるべき措置を求めていけるよう、行動します。また、このことについての理解と協力を、出版業界にも求めます」
最後は「私たちは物語を安心して委ねられる映画業界を望みます」とし、声明を締めくくった。
この声明文には、賛同者として、芦沢央さん、彩瀬まるさん、井上荒野さん、小川糸さん、窪美澄さん、津村記久子さん、西加奈子さん、蛭田亜紗子さん、ふくだももこさん、三浦しをんさん、湊かなえさん、宮木あや子さん、村山由佳さん、山崎ナオコーラさん、唯川恵さん、吉川トリコさんといった作家が名を連ねている。
山内さんと柚木さんはそれぞれのTwitterでも声明を発表したことを報告した。