タイトルは「助けて!!」。食料不足の上海で「餓死」の危機を訴えた文章が削除される

stormzhang氏は自らのウェイボーで、削除されたことについて「歴史の流れの中で力は尽くした。何も恥じることはない」。

「求助!!(助けて!!)」。

中国・上海市の食料不足について危機感を露わにした文章が、現地のネット空間で話題を呼んでいる。

事実上のロックダウン措置の続く上海では、食べ物を買えない人たちがネットなどで不満の声を上げている。この文章では、上海市東部に住むという匿名ユーザーが「餓死者が出てからでは遅い」と警鐘を鳴らす。

文章はネット空間で拡散されていたが、原文は削除されている。

一体、どんな内容だったのか。

中国SNS「wechat」の削除画面
中国SNS「wechat」の削除画面
中国SNS「wechat」より

■1%でも25万人が食べられない

上海市では、新型コロナウイルスのオミクロン株などが猛威を振るい、4月8日には症状ありで1015例、無症状で2万2609例の感染者が見つかっている。

市内では、東西に分けた事実上のロックダウン措置が3月末から4月初めにかけて開始された。

住民は自宅から出られず、食料不足を訴える投稿が次々とネットに上がっている。政府からの物資配給もあるが、地区などによってばらつきが出ているとの声もある。

こうしたなか、文章で声を上げたのは、上海市東部に住むという「stormzhang」という匿名ネットユーザー。4月8日にアップされ、この時点で「封鎖されてから22日目」だという。

東部のロックダウンが始まったのは3月28日。一方で居住エリアごとの封鎖措置が先行して始まっていたケースもあり、stormzhang氏も巻き込まれた可能性がある。

文章では、「上海がこうなった原因を語りたいわけではない。責任を問うこともなく、そんな権力はない。話したいのは、全ての人が無視できない、上海人民の基本的な生活保障についてだ」と切り出す。

生活保障とは食料のこと。stormzhang氏の元にも、これまでに3度の配給があった。しかし「もって2日。焼け石に水だ」と実情を明かす。居住エリアごとに管理能力や供給される物資に差異があり、配給が届かない地区すらあるという。

防護服に身を包んだ警察官 4月8日 上海市(Photo by HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)
防護服に身を包んだ警察官 4月8日 上海市(Photo by HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)
HECTOR RETAMAL via Getty Images

この現状について「多くの人は信じないかもしれません。2022年のきょう、国際的な大都市で、人々が食べ物を買えずにいるだなんて、自分が経験していなければ私だって信じません」と自嘲する。

そして、ある計算を持ち出す。

上海の住民はおよそ2500万人だが「1万歩譲って、99%の住民に物資が行き届き、食べられずに困っているのが1%だけだとしても、25万人です。国際的な大都市で25万人が食べられない。災難ではありませんか?」。

そして、一部の人たちは実際に食料不足に苦しんでいるとして「もし万が一、この大都市で餓死者が出て、人道主義上の災難が起きれば、国際的な笑いものです」と警鐘を鳴らす。

物資配給に従事するボランティア 4月8日 上海市 (Photo by Chen Chen/VCG via Getty Images)
物資配給に従事するボランティア 4月8日 上海市 (Photo by Chen Chen/VCG via Getty Images)
VCG via Getty Images

文章はこう締め括られる。「問題を解決する人の目に留まるよう、この文章を拡散してください。明日の上海の人々が食料を手に入れ、食べる肉があることを願います。最後に、災難が起きているときには、正能量(ポジティブエネルギー)をやめてください。助けを求めるシグナルに道を譲ってください」。

ポジティブエネルギーとは、物事のプラス面や、政府にとって好ましい情報などを指す。

この文章の原文は「規約違反」だとして中国のSNSから削除された。一方でSNS・ウェイボーでは、複数のネットユーザーたちが、文章の書かれた画像などをシェアしながら「彼の書いたことは全て事実だ」などと抗議している。

stormzhang氏は自らのウェイボーで、削除されたことについて「歴史の流れの中で力は尽くした。何も恥じることはない」と投稿した。

■文章で抗議、西安でも

中国では、厳格な水際対策と、徹底した検査と隔離を組み合わせた「ゼロコロナ」政策を取り続けてきた。一方で政策のしわ寄せを受けた市民らが文章などで抗議するケースも出てきた。

2022年1月には、ロックダウンとなった西安市で、現地在住のジャーナリスト・江雪(こう・せつ)さんが「長安十日」という文章を発表。食べ物が住民の手の行き届かない事態に対して「本質的には人災だ」と指摘した。

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